2019年2月24日日曜日

火星年代記経由で華氏451°を読んだんだ

火星年代記経由で華氏451度を読みました
なので展開は大体予想がついて、その通りになったのですが

現代社会はこれを書いた側、編集した側がポリコレソードをぶん回す
昇火士になってしまったというクソみたいな現実を顕にしてしまった
そして彼らが崩壊するに任せた都市の住人が生きる為に殴り返してきた

この本徹底的に批判しないといけんかも

『火星年代記』と『華氏451度』だけでは
ブラッドベリの考えは分からないんでしょうが

民主主義国家では誰に投票したかを問わず
万人が選挙結果に責任を負う
しかもそれで人が大量に生きたり死んだりする

ブラッドベリに限らず「知識人」の方々には
その自覚が決定的に欠けている事が
今致命的に暴かれつつある

はっきり言えば 『華氏451度』を書いたような連中の無責任さが
無意識に億単位の人間を踏みにじったのが今の世界です

そして踏みにじられた人間が
選挙を以て正当に殴り返したのがトランプ政権だと私は認識しています

この無責任さが典型的に現れているのがベイティーの扱いだと思います
「ベイティーは死にたがっていた」?
ふざけんなお前が殺したんだよ、お前の殺意で!!

「知識人」は自分達が全ての責任から逃避できると思い込んでるようですが
残念ながら神でさえそんな事は許されない
欺瞞が腐敗を生み出し
それが暴かれた

奴らは死体だ
生きている人間を阻む事はできない!

まあ、本そのものに価値があるわけではない
それを読む人間に何かを惹起する事はあるから
保管しておかないければいけないけれど

という事はブラッドベリ自身にも自覚があったようですが
新訳では258Pとかの描写を読む限り

パートナーとか連れ合いに関する価値観のズレも感じました
完全に道具だったミルドレッドが哀れでならない

結婚するのが当たり前ではあるけれど
相手に人格を認める必要はなかった
そんな古い唾棄されるべき価値観が無批判に使われているのは今となっては
いやモンターグも同じ哀しき道具なんですが

結婚が良くも悪くも身分証明になる時代があった
相手のいない人間は不完全扱いされた
男にとっても女にとっても
その弊害が出てきて、婚姻の意義が問い直されているこの時代に
無批判に伴侶を小道具扱いした本が読まれれば「うえっ」ともなる

古い作品を今の基準で断罪するのは馬鹿のやる事とはいえ

いやー、何というか こういう類の読書経験をするのは初めてかも
 広く世界に讃えられた作品が
現実世界にその欺瞞を暴かれる
こんな事もあるんだなって

私は結構本を読むのも好きですが
スポーツファン(主にやきうとフィギュア)でもあり
いっぱい食べるのが好きで
アニメやゲームにどっぷり浸かった人間なので

哲学書や文学からのきらめきは
試合や食事、遊びの中
世の中の何処にでも無限に存在する
本だけが特権を持っている訳ではない

人格、倫理、論理を構築するのは自分だ
本はその目的に適いやすくはある
(文章は論理に組み込みやすいからね)けれど

唯一では絶対にありえない
『華氏451°』が馬鹿にしたものからも素晴らしいものは無数に生まれる
ありとあらゆる所に自らを作り出すものは存在する
その営みこそが哲学で
読む事なのではないのか?

と、いう事で
今こそ『華氏451度』を読むべきなのかもしれない
ただし人を苦しめる無責任の象徴として
徹底的に批判的に

『華氏451度』「知識人」こそが「昇火士」である事をむき出しにしている今
奴らに我々が抗う為に!

2018年10月24日水曜日

2018-19シーズンにおける新採点まとめ

・ジャンプ基礎点が下方修正。特に高難度四回転で大きく減少
・GOEの幅が±3から±5に。補正は一律+1で+10%。コレオのみ+18%
・1.1倍の後半ボーナスが入るのはSP最後の一つ、FS最後の三つのみ
・二回飛べる四回転は一種のみ。実質もう一種は三回転限定に
・コレオの基礎点、GOE幅が上昇
・SPでの単独ジャンプ前のステップが不要に
・男子のみ演技時間が4:30→4:00に
・男子のみFSのジャンプが8→7に

以上が採点改正の要点です。
では一つ一つについてもう少し細かく。

・ジャンプ基礎点が下方修正
4A15.0→12.5
4Lz13.6→11.5
4F12.3→11.0
4Lo12.0→10.5
この四つは実際に飛ぶ事を想定しておらずに
慌ててごっそり引いたようにも。
4S10.4→9.7
4T10.3→9.5
ちょっとだけ4Sと4Tの差が広がりました。
3A8.5→8.0
3Lz6.0→5.9
3F5.3
3Lo5.1→4.9
3S4.4→4.3
3T4.3→4.2
2A3.3
3Aも大きく減りましたが
それでもなお3Lzとの差はあります。
男子は二つ飛ぶと基礎点だけで4.2に。

女子の3A挑戦は減るかも…と思ってましたが
そうでもない模様。

・GOEの幅が±3から±5に。補正は一律+1で+10%。コレオのみ+18%
GOEの採点基準が7段階から11段階になり、
点数幅そのものも大きくなりました。特に高難度ジャンプで。

例えば4Lzの場合、
9.60~13.6~16.6
だったのが
5.75~11.5~17.25
になります。
GOE5を取れた場合は旧採点より出ますが
転倒だと問答無用で-5、ごっそり引かれて3Lz以下に

これは少し崩れた4T(9点前後)と
転倒しても回りきった4Lz(転倒-1含め8.6)の点数が
殆ど同じだったので分かる改正です。
4Lz、4F、4Loは転んでも回りきれば十分な点が出てしまう状態でした。

更にジャンプGOEの認定要件として
1 高さおよび距離が非常に良い
2 踏切および着氷が良い
3 開始から終了まで無駄な力が全く無い
更にこれらをすべて満たした場合のみ
4 ジャンプの前にステップ,予想外または創造的な入り方
5 踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い
6 要素が音楽に合っている
が認定されると定められました。一つでGOE1になるとの事。
ただ、具体的にどれだけ123を満たせば
456も評価基準になるのかはまだ手探りの状況です。

一方で「空中姿勢の変化」や「ディレイ」はなくなったので
例えば手を上げてのジャンプ、通称タノジャンプは
それだけではGOEを算出しない事になりました。
でも美しいタノジャンプに定評があった選手達は問答無用で今も飛んでます。

・1.1倍の後半ボーナスが入るのはSP最後の一つ、FS最後の三つのみ
特にジャンプを全部後半に回す女子が登場し
プログラムがいびつになっていた状況に待ったをかける改正です。

このSP最後一つ、FS最後三つというのがなかなかの曲者で
コンボに後半ボーナスを入れようとすると最後にするしかなく
リカバリーが効かなくなります。

例えば前半3A、後半4S3T、4Tの構成なら
これまでは4Sで転倒しても4T3Tを飛べれば傷は浅くなりましたが
現行ルールだと3A/4T、4S3Tの構成にしないと+3Tのボーナスは無し。

なので後半クワドコンボは一発勝負になります。
しかも転倒してしまうとコンボが入らず基礎点3/4かつGOE-5となるので
極めてハイリスクになりました。
おまけに後半ボーナスはGOEに反映されないのでリターンも減るという

・二回飛べる四回転は一種のみ。実質もう一種は三回転限定に
今までは4T二つ、4S二つ、3A一つの構成が出来たのですが
以後これはできなくなります。

FSで二回飛んでいいジャンプは二種類のままなので
もう一種類は必然的に三回転のどれか、という事になります。
男子は単純に点数の高い3A二つを選択する…とも思っていましたが
3Lz二つ、3F二つで挑んでいる選手も現在かなりいます。
実の所3Aを他の三回転と同じように飛べる人って限られてますし。

結果的に、特に男子では
四回転を飛べてかつ3Aが得意な選手がこの改正の恩恵を受ける事になります。
3Aの重要性がこれまで以上に増したと考えてもいいでしょう。

・コレオの基礎点、GOE幅が上昇
基礎点が3.0→4.0
GOE5だと4.1→5.5に

GOE0とGOE5の点差は1.1→1.5になります。
実の所GOEマイナスのコレオってA級大会で見た事ないので
そんなに大した改正ではないです、点数だけ見れば
ジャンプの基礎点が減った分ちょっとだけ比重は増えましたが

とはいえコレオはフィギュアの華
5を取れたであろうミーシャ・ジーが引退した今
誰が最初に最高点を取るか、皆が注目しています

・SPでの単独ジャンプ前のステップが不要に
今まではこのコネクティングステップとも呼ばれるものが必要で、
無しだとGOEが大きく引かれる為に、
ステップからの四回転が出来ないとSP2クワドの強みが薄かったのですが
改正で必須ではなくなりました
GOE要件その4を満たすので利点は残ってますが。

・男子のみ演技時間が4:30→4:00に
・男子のみFSのジャンプが8→7に
これは単純な時間短縮、
及びそれに伴う救済措置
更には得点におけるジャンプの比率減少も兼ねているのだそうです。

が、最後のジャンプにかかる時間はせいぜい5秒
なのに30秒も縮まってしまい
要素の間で息を整える時間がバッサリ削られた為に
非常に体力への負担が大きくなっています。

またこれのせいで代名詞として知られていた技、
例えば宇野昌磨のクリムキンイーグル、
ジェイソン・ブラウンのスパイラルなどを入れる時間が無くなってしまい
総じてファンの間では不満の大きい改正です。
4:15とかに出来ないもんですかね…?

具体的にどんな採点になるのか分からないので
あくまで個人的にですが
要点をまとめてみると

男子だと3Aが上手いクワドジャンパーが有利に
高難度ジャンプはGOEを取れないと相対的に弱体化、
かつ転倒でも回りきれば得点源とはいかなくなった
ジャンプ以外の得点はそんなに増えていないものの、
相対的には比重が大きくなった
TESの天井が低くなるのでPCSの比率が増大

といった所でしょうか。
まあ元々、トップクラスの選手は全部出来るオールインワンが多かったので
そんなに影響はしなさそうです。
3A苦手で多種クワド持ち、ただしGOEは多くなかったネイサン・チェンが
直撃を受けるかとも思ってましたが
今季で3A急成長、更にPCSもガッチリ取って対応してきました。

とはいえ、繰り返しになりますが
具体的にどんな採点がされるのかは未だ不透明です
今季は特にエッジエラーや回転不足の判定がキツくなっている模様で
何人かが大きく煽りを受けています。

そして、最後にPCSに関して
転倒などの大きなエラーが一つあった場合は10を出せない
二つ以上あった場合はSS、TR、COに9.5、PE、INに9を出せない
と規定されました。

つまりPCSでごっそり点を取れるトップクラスの選手達でも
二つ転倒すると絶対にSP46.5、FS93を越えられなくなるので
天上の戦いにおいては決定的な致命傷になります。
まあ、元々二つ以上転倒した選手に
そんな派手なPCSが出たケースはそんなになかったのですが。

さて、しかしどうなるでしょう
これから実際の演技と照らし合わせて
採点基準を修正しないといけないので

ぶっちゃければやってみないと分かりません。

2018年10月23日火曜日

2016-17シーズンから平昌五輪を挟んで現在までの男子フィギュアの流れ

ボーヤン・ジンが4Lzを着氷して始まった新次元クワド時代。
その一つの締めくくりとなったヘルシンキ世界選手権は、
4Lo4T4Sと他要素を完璧に揃えた羽生結弦が制覇。
4F4Lo4Tと他全部完璧(ただしgoeでちょっと羽生さんに及ばず)の宇野昌磨が二位。
4Lz4T4Sと他の要素普通以上のボーヤン・ジンが三位。
という結果に。

しかし4T4S他要素完璧のハビエル・フェルナンデスの威力は変わらず、
更に4Lz4F4T4Sとステップ完璧スピン普通以上のネイサン・チェン、
4T他要素完璧、ただし4Lz不安定のミハイル・コリヤダらが彼らを猛追。
4Lz4F4T4Sのヴィンセント・ジョウ、
4Lz4T滑り上手いドミトリー・アリエフらも続いて
平昌五輪への争いは混沌としていました。

その一方で様々な選手達が自分達の方法で少しでも上を狙った時代でもあります。
一時期飛んだ4Sを捨て4Tで最後の五輪に挑んだパトリック・チャン、
4Tと3Aと忙しない脚さばきで世界四位に食い込んだオレクシイ・ビチェンコ、
鉄板の4Tと3Aの威力でGPF出場、四位を掴んだセルゲイ・ヴォロノフ、
五輪で4Sを取り戻し本来の総合力で世界選手権に戻ってきたミハル・ブレジナ、
4Tを安定させスピンを急激に伸ばして五輪を勝ち取ったキーガン・メッシングら、
一種の四回転を軸に世界と渡り合うベテラン。

4Tや4Lz<も決めたけれども最終的には四回転抜きを選び
PCSで五輪に華を咲かせたアダム・リッポン、
4Tは間に合わなかったものの他完璧かつ異次元のジェイソン・ブラウン、
4Tに見切りをつけてステップとコレオに全てを賭けたミーシャ・ジー、
最初からクワドに目もくれずスケーティングで勝負したヨリック・ヘンドリックスら、
クワドなしで多種クワド選手達よりも高順位に入った選手。

4T4S4Lzと荒々しい勢いで五輪まで後一歩に迫ったアレクサンドル・サマリン、
4T4Sと総合力、ただし安定を欠くも五輪で揃えたダニエル・サモーヒンら、
多種クワドの威力で一気に世界に食い込む若手。

本当に多士済々といった感じで、
誰が五輪を制覇し誰が入賞するのか、
全然読めやしなかったのが平昌五輪でした。

結果的には怪我で4Loを欠いた羽生結弦が4T4S二つづつ(一つ乱れ)で優勝。
4Lo転倒も4Fと4T二つを降りた宇野昌磨が二位。
4Sが一つ2Sで吹き飛ぶも4T4S一つづつのフェルナンデスが三位に。
ただしネイサン・チェンが4T二つ4F二つ4S4Lz合計六クワドで
FS最高得点をもぎ取っています。

この後の世界選手権では、
五輪の無念を晴らしたネイサン・チェンがSPFSを揃えて優勝。
怪我しつつ強行出場した宇野昌磨が驚異の二位。
FSで上手くいかずも基礎技術で押し切ったミハイル・コリヤダが三位に。
一方で四回転一種(4T)でオレクシイ・ビチェンコが四位に入っています。

これで一つの区切りが付き、
五輪以前から公言されていた採点改正が行われて
初のシーズンとなるのが現在です。

ジャンプ、特に四回転の基礎点が下がる一方、
goeの幅が±3から±5となって+5を取れれば
旧採点以上の点が出せるようになりました。

また男子はFSのジャンプが8→7となり、
時間も4:30→4:00に短縮。
最後のジャンプで2Aとかを飛んでた選手は有利になりますが、
一方で時間短縮は体力への負担が極めて大きい模様です。

更にFSにおいて、
二回飛べる四回転は一種類だけになりました。
例えば4T二つ4S二つという構成はできなくなります。
二回飛ぶジャンプの一つは三回転になるので、
皆3A二つで行く…と思っていましたがそうでもない様子。

総じて高難度ジャンプの基礎点に依存する戦略は不利になり、
スピンやステップのgoeが重要性を増す形になります。
その上でトップを争う為には多種クワドを高いgoeで飛べ、と。

新しい採点基準に対する選手達の戦略は様々で、
4Loや4Lzを4Sに変更している選手やクワドを減らす選手がいる一方、
知った事かと言わんばかりにクワドマシマシで戦っている選手もいます。

元々選手達からすれば
やりたい事、目指すべき姿があって
その上でどうやって点を取るの勝負となっていたので
今の所、このルール変更で根本的にやり方を変えた選手はいません。
回転不足やエッジエラーの厳格化で苦戦している選手もいますが。

そしてGPS第一戦スケートアメリカが終わった時点で
新クワドを投入して飛躍する若手がバンバン出ていたり、
31歳の選手が4Loに挑戦したりと

やはりというか
限界を突き抜けようとする選手達の熱い闘志は
結局の所全く変わっていません。

五輪が終わってなお戦い続けるベテラン達
2022年の北京五輪を目指す中軸世代達
その更に先を見据える若手達が
今しのぎを削っています。

今季の世界選手権は日本、さいたまスーパーアリーナ。
総合力を要求するルールの下で
誰がどんな戦略で抜け出るのか。

今季も決着が付くまで
目を離せそうにありません。

2018年9月26日水曜日

2018-19シーズン、男子スケーターたちの展望1

さて、何を隠そう。
私は「2016-17シーズン、平昌五輪に挑む男子スケーター達のまとめ と現在に至るフィギュアの流れ とその流れを作った名選手達」や
ユーリ!!!ON ICEを見た人々に贈る、 男子フィギュアスケーター紹介本
とかを作った人間です。

2018-19シーズンへのまとめは作ります。
出来ればpdfも現在の内容に合わせて大幅に書き換えたい。

という事で、ここに下書きを書いていこうかなと。
1ツイート分と一ページ分、どっちにも対応できるように。
下書きゆえのとりとめなさはご容赦を!

羽生結弦(日本)
https://www.youtube.com/watch?v=M8XcybBTUxc

王道と覇道を極め、第三の道を拓く
五輪連覇、異次元の最高得点更新、世界初の4Lo戦力投入
フィギュアスケートの歴史を変えて向かうは
永遠の憧れへの挑戦であった

既にあらゆる要素も表現力も世界一
しかしまだ何もかも足りない
今最も燃えている男

怪我から復活しての五輪連覇。
男子フィギュアスケートの最高得点大幅更新。
世界初の4Lo完全着氷および戦力投入。
フィギュアスケートに無数の伝説を打ち立て、
ここからは自分の為に四回転アクセルを決めたい、やりたい事をしたい…
と公言していたのですが。

しかし彼は最も難しい挑戦を見つけてしまいました。
永遠の憧れであるプログラム「秋によせて」と「ニジンスキーに捧ぐ」、
ジョニー・ウィアーとエフゲニー・プルシェンコの精髄に一歩でも近づくのだと。
そして2018-19シーズンの初陣、
上手くいかなかったオータムクラシックで決意するのです。
「全てが足りない」と。

選手としての長所は全部。
…もう少し書くと、三種類の四回転を含む高く美しく流れるようなジャンプ。
レベルでは測れない技術の粋を尽くしたスピン。
誰が見てもその質がわかる音と氷に一致したステップ。
安倍晴明とプリンスを演じ分ける表現力。
フィギュアスケートに関わる全てが世界超一流です。
特にアクセルは他の追随を許さぬ圧倒的な質があり、
決まれば世界初となる四回転アクセルにも目処が立ちつつあるのだとか。

でも「全てが足りない」と本人は決心しています。
果てを極めた暁にはプロトコルがgoe5で埋まる事でしょう。

演技を一つ選べ…と言われるとたくさんありすぎて難しいのですが。
ここでは平昌五輪SP「バラード第一番」、通称バラ一をご紹介。
怪我明けからの準備期間は二ヶ月あるかないかで、
流石の彼でもこの短期間では難しいのでは…
と思わせてからのほぼ完璧な演技。

しかしそれは「勝つために全てを捨てた」と本人が語ったように
頂点は競技を進化させねばならぬという信念、
その象徴でもある新ジャンプ4Loを断念した結果でもありました。

羽生結弦は常に頂点に立つ為に戦っています。
ですが、五輪では勝つ事のみを優先せざるを得なかった。
それを踏まえるとまた違うものが見えてくるかもしれません。

…一方、勝利を最優先した結果がFS「SEIMEI」での四回転四本、
しかも決まれば五輪史上初になった4Tからのハーフループコンボだった
(本番では着氷ミスでコンボにならず、3Aに付け替えました)
のがフィギュアスケートという競技の恐ろしさだなぁとも。
安全策で四回転四本を要求されるなんて…。


と、こんな感じで
今季競技に挑む選手達の紹介を書いていくつもりです。
Twitterの方はリンク込みで140字。
pdf用はB5で一ページを想定、900字で略歴、特徴、お勧め演技の三つを書きます。
この字数だと寄り道も出来るのでしていこうかなと。

実際の文章はここから色々書き換えるんじゃないかなー
良かったら以後もお付き合いを!

2018年9月23日日曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その3 あるいはかえみと論考

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・Vtuber(17末、にじさんじ18)
というより実質にじさんじ、もっと言えばかえみと。
現状pixivで圧倒的に強いのはこの二人です。
おそらくtwitterでも。

そもそもVtuber、バーチャルユーチューバーとは何ぞや。
現在進行系の現象なので色々と論じ方はあると思いますが、
結論から言えば2Dあるいは3Dのアバターを着てる配信者です。

ただ彼らの多くがYoutubeを活動拠点としているので、
Youtuberの一種とみなされる事が多いのですが、
実はそれ以外の場、例えばtwitterとかでも活動しているので
「配信者」と定義してみました。

実際の所、元々有名人だったり、イラストレーターだったり、
ミュージシャンだったりといった背景を持つ事なく、
発言が面白かったり、考察が鋭かったり、行動が奇矯だったりと、
twitter上の活動だけで有名になったアカウントが結構いるのですが、
(アルファツイッタラーなんて言い回しもあります)
そんなSNSだけで有名になれるような元々面白い人々が、
アバターを獲得して大ブレイクしたのがVtuberだと私は認識しています。
少なくともヒットしているVtuberに関しては。

で、ここからが本題。
SNSにおけるアカウント同士の間柄に百合が見出されたのは、
実はVtuberが最初ではなかったりします。

艦隊これくしょんのなりきりアカウント同士(二人とも女性キャラ)で、
思いを打ち明け、受け入れられたという出来事がありました。
結構少なくない人々の記憶に残っている彼女達は、
その後アカウントを消してしまい、アーカイブも残さなかったので、
アルペジオのように電子の海に去っていってしまったのですが。

もう彼女達の名前を使っても検索すらできなくなった二人の間柄には、
確かに百合へと繋がるものがあった筈です。
そこには原作への愛があって、
現在進行系で進展していた間柄があり、
その進展を共有していた人々がいました。

それから数年経って。
最初に月ノ美兎がその強烈な中身でブレイク。
その後彼女が築いた橋頭堡から、
Vtuberグループ「にじさんじ」が世に出てきます。
で、月ノ美兎自身もその一員として動画配信でコラボもしているのですが。

始まりがいつだったのかは分かりません。
元々仲が良かったのか、配信中に気が合ったのかも。
しかしいつの間にか月ノ美兎と樋口楓は一番の仲良しさんになり、
この二人で何かする時が最も盛り上がるようになりました。

Vtuberというガワがあるのでわかりにくくはあるのですが、
面白い人達が一人、二人、ないし多人数で愉快な事をして
(バカな事、と言ってもいいかもしれません。勿論褒め言葉)
彼ら自身も視聴者も一緒に楽しんでいるのが流行りの本質です。

で、バーチャルに限った話でもなく。
二人でいっぱい楽しい事をすれば仲良しにもなるよね。

そんな訳で、まあ何というか色々と愉快なコトをしつつ
少女(とあえて書きます)二人がリアルタイムで接近していくのを、
視聴者は現在進行系で共有する事になりました。
というか今この瞬間にしてます。

SNS上で…というのはそんなに重要ではないのですが、
二人の間柄が進展していくのを共有する経験は、
おそらく多くの視聴者にとって非常に新鮮なものでした。

バーチャルキャラ同士なのに
間柄の進展はリアルよりもリアルという
何とも奇々怪々な現象がそこにはあります。

更に、かえみとのような類型が
百合ジャンルにおいて大当たりした組み合わせには無かったのも
百合ファンにとっての新しさがあったのだと思います。

ざっくりと切り分けてしまうと、かえみとって、
ワトソンとホームズの間柄に似てるんですが。
こういう類型の組み合わせって、
そういえば大きいジャンルには無かったように思えます。
ちなみにハドソン夫人が静凛で、
モリアーティ教授は…誰だろう?

親友…ともちょっと違う、
不均衡のあるバディというか、戦友というか。
(何でもサイドキックという呼び名があるんだそうです)
ワトソンだけでは大人気シリーズにはならなかったのでしょうが、
しかしホームズはワトソンがいないと始まらない、
かえみともそんな間柄に思えます。

で、再び論を引き戻して。
Vtuberの本質はガワを被った元々面白い人々と書きました。
しかし彼らは、活動を止めてしまうと急速に忘れ去られてしまう
どうにも避けがたい宿命を背負った存在でもあります。
良くも悪くも刹那において最も輝けるのが人気アカウントであり、
Vtuberもその延長線にあります。

ずっとずっと二人では走れない。
どこかで必ず終わりが来ます。

仮ににじさんじが活動停止後にアーカイブを残しても、
(多分残さないと思います)
我々に出来るのは追体験だけで、
二人が接近していく刹那は共有できない。

SNS上での間柄の進展、そこにあるときめきは、
現在進行系である事が生命線です。
過去形になってしまうと後世への伝達が極めて困難になるでしょう。
実際に検索すらできなくなったケースを私は紹介しました。

イラストとか小説とか薄い本とかの二次創作は残る筈。
しかしそこから当時の熱をどれだけサルベージできるのか。

ときめきは今そこにあります。
しかし後に残せるのか。
そもそも無くなってしまった刹那を残す必要があるのか。

後になって残るのは、
写真…もとい二次創作だけ、という事になるかもしれません。
ジャンルの栄枯盛衰はどこにも例外なくあるのですが、
Vtuberはそれが極端に激しくなる予感が、実の所すごくします。

例えば10年後、今の事情を知らない人々に、
どう説明すればいいんだろうなぁ。

もし、後に伝えたいのならば。
今から何か方法を考える必要はあるでしょう。
とても大変でしょうけれど…

2018年9月10日月曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その2

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・魔法少女まどか☆マギカ(11)
脚本の名前で皆嫌な予感はしていましたが、
実際キャラデザで釣られた視聴者を地獄に叩き落とした、
残酷な運命に5人の少女(劇場版で+1)が立ち向かう物語。
切実な願いを悪意に踏みにじられながら、
あがき続ける少女達。
そして主人公が最後に出した答えは…

強引な掴みが最初に話題になりましたが、
物語の全貌が少しづつ見え始め、
オープニングが誰の言葉なのかわかった時の感覚は、
おそらく実際に視聴しないと分からないかと。

…それまで主人公は 「お前何の為に存在してるん」と思われてたりしていました。
最終話までには皆がごめんなさいしたけれど。

百合ジャンルの中でも
これほどむき出しの生死が牙を剥いてくる作品は珍しく、
それ故に少女同士の絆も印象的。
なお作中でカタストロフが起きる前に現実世界で大災害が起きてしまい
最終回の放映がしばし自粛されたりも。

このアニメの外伝にあたるスマホゲーム
『マギアレコード』も2019年のアニメ化が決定。
こちらは(百合ファンも含めて)比較的狭く深くで突き刺さっていたのですが、
さて、アニメ化でどうなるやら。

・ガールズ&パンツァー(13)(劇場版15)
廃校の危機を迎えた学校が
ある競技の強豪から転校してきた主人公を中心とし、
学校存続の為に全国大会制覇を目指す物語。

ただしその競技は実弾の飛び交う戦車軍団同士の戦闘。

これだけ見ると何が何だか分からないでしょうが、
濃いミリタリーネタを挟みつつも、
最初は自身の境遇に戸惑っていた主人公が多くの仲間達に支えられ、
自らの意志で競技に戻っていく実に王道な物語です。

大怪我とかは無いよ?
いや、本当に無いですって。

こちらも最終回放映までにすったもんだがありましたが無事完結。
更に劇場版も上映され、これが素晴らしい出来で大ブレイク。
特に女性ファンは劇場版から入った者も多い模様です。

…あるキャラが劇場版以降、急に注目され始め、
二次創作で色々と変な属性を付けられたり。
舞台となった大洗町に多数のファンが詰めかけ、
彼の地の魅力が再評価され、経済が大いに潤ったりと、
場外で色々な現象が起きた作品でもあります。

元々大洗町が観光地として魅力的だった事もあって、
アニメによる「聖地巡礼」が注目されるきっかけともなりました。

2018年現在、完結編が制作されている模様。
どうなるかな。

・THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS(11)(アニメ15)
通称デレマス。二次元アイドルブームの火付け役、
アイドルマスターシリーズを下敷きにしたスマホゲーム。
一つの世界観に無数の女性キャラを登場させて大当たりした、
おそらく二つ目のジャンルです。
(一つ目は東方で三つ目は艦これ)

プレイヤー=主人公のプロデューサーはほぼ男性と思われていますが、
百合ファンはそんなもの知った事かと言わんばかりに
アイドルであるキャラ同士の組み合わせを無数に見つけていきました。

元祖の人気もあって元々隠然たる勢力がありましたが、
火がついたのはアニメ以降。
(ハーフの彼女が普通に日本語喋った事があったのは黒歴史になったとか)
プレイヤーが想像もしていなかった組み合わせも数多く提示され、
2018年現在でも熱い人気を見せています。

私的にアイドル達に関われなくもないが、
まずそんな事しなさそうなアニメの男性Pの味付けも絶妙でした。
おかげで百合も×男性Pも捗ったのだそうで。

…一方、現在深刻な社会問題になりつつある
ゲームへの想像を絶する課金が発生し始めたのもこの作品。
あったなぁ、課金兵なんて言葉。
言葉は見なくなっても現象が更に過激化するなんて…

そして、2~30代の女性に声をかけ、
アイドルとして大成させる事が可能なゲームだったりもします。
おそらく多数のキャラを出すにあたって、ありとあらゆる特性を試す中で 
(プレイヤーにとって)年上のおねーさんへの需要を狙ったのでしょうが、
これも思わぬ方向に当たっています。

百合ジャンルの歴史においては、
百合の鉱脈は少女同士だけではなく、
大人の女性同士、あるいは大人と少女の間にも存在する事を
おそらく最初に示したジャンルでもあります。
(もちろんこれ以前にもそういう作品は多数あったでしょう)
ファーストインパクトこそ艦これに持っていかれましたが、
アニメ化をきっかけにその意義が大いに注目され、
今日も非常に活発なジャンルになっているのは先述の通り。
20代後半が明言されてるキャラ同士の組み合わせがジャンルになったのは
デレマスが最初の筈。

後続作品のシャイニーカラーズは、
2018年現在、まだコンテンツそのものが大当たりはしていない模様。
やはりアニメ化待ちになるのでしょうか。
…ただ、最年長が現状23歳(しかも一人。20代ですら二人だけ)なのは、
そのずっと上の女性を当ててるコンテンツの後継作として
ちょっと痛手になる予感も。

・ラブライブ!(10)(アニメ、ゲーム13)
元々は2010年の雑誌企画で、CD、漫画(11)ライブ(11)の成功を経て、
アニメ(13)で一気に爆発。
学校生活の中でアマチュアとしてアイドル活動を行う
「スクールアイドル」の概念をぶち上げたシリーズです。

初めは学校存続の為に始めたスクールアイドル活動を通じ、
少女達が集い、時にすれ違いつつも、
最終的に九人全員が主人公として結束していく物語で、
社会現象になるくらい多くの「ラブライバー」を生み出しました。

製作者の予想を遥かに超えてヒットした作品でもあり、
その中には大量の女性ファン、更に百合ファンも含まれています。
(間違いなくこんなに女性に当たるとは思ってなかった筈)
男性と女性で人気の組み合わせが大きく異なる事、
百合二次創作している人数はおそらく女性の方が多いのも前述の通り。
この作品はネタバレの意味が殆ど無いので名前を出すと、
にこまきとのぞえりは女性人気が半端なく強いですし、
二次創作してる方の多くも女性です。
この組み合わせが人気な理由が分かると、
女性に当たる百合の何たるかも分かるかもしれません。
ちなみに私はまだ学んでいる段階です。

特に女性にとっては東方に続く第二の巨大百合ジャンルです。
男性はμ's、ないしAquorsをアイドルとして追いかけもしますが、
女性は比較的中に入りやすい(無論、外から見ている人もいる)分、
そこで描写されるときめきは女性により強く響くのかも。

…男性目線からすると、
明白な主人公がいるわけではないので、
一体化の方向で行くとちょっと難しいんですよね。
出来ない訳ではないんですが。

ちなみに無印の組み合わせ一番人気は三年生と一年生、
具体的には先述のにこまきなのですが、
そこには先輩後輩の文脈は殆ど無いです。
これはマリみてにおける超然とした存在への「憧れ」を起点とし、
様々な感情へ分化した百合において実は非常に特異かつ画期的だったりも。

いや「憧れ」が絡んでないわけではないのですが、
マリみてにおける高嶺の花への憧れではなくて、
もっとこう、何というか…
年が離れた級友なので距離そのものはずっと近いんですが、
決定的に自分とは違うものをお互いに持っていると言えばいいのか。

要は15年経って、百合へのときめきが
すごくすごく多様化したという話でございます。

・アイカツ!(12)
就学前の女の子をターゲットにし、
プリキュアのシリーズ化に成功したバンダイなどが
その少し上の年代を狙った企画。
トップスターを狙う少女達がその養成校に入って
妙な事もしつつ明るく楽しく頑張っていく物語です。

やはり少女同士の絆がアニメなどでガッツリ描写され、
メインターゲットである小学生女子のみならず、
中学、高校…どころか青年層の女性にも大ヒット。

そしてプリキュア同様、
このアイカツやプリパラが撒いた種は、
他の百合ジャンルへと入っていくきっかけともなっています。

というか、子供にとっては
ラブライブがアイカツの続編に見えるってのは、
言われてみれば分かるけど、意外でした…

・けものフレンズ(15)(アニメ17)
ヒトっぽくなった動物「フレンズ」達の集う、
でっかい動物園ジャパリパークで
よく分からない怪物「セルリアン」に脅かされつつ
フレンズ達と共にドッタンバッタン大騒ぎする、
一見すれば呑気で優しい世界での物語。

元はゲームが中心の企画でした。
アニメ化に際して色々世界観が書き足されています。

このジャパリパークを舞台に、
一切の記憶がない主人公があるフレンズと二人でパークを巡り、
総じてお人好しでちょっと抜けてる様々なフレンズに出会い、
彼らの問題を解決しつつ、自分が何者かを見つけて…

そこまで考えなくても 「すっごーい!」「たーのしー!」アニメです。

1話で主人公同様、視聴者も何が何だかな状況に放り込まれますが
2話でおや、となり
3話ではすっかり引きずり込まれてしまう
極めて優れた脚本と構成に、
一歩間違えるとチープになりかねない絵面が上手く嵌った
色々な意味で奇跡みたいな作品です。
見るなら必ず最後までどうぞ。
物語ってのはやっぱ脚本と構成なのねってのが本当によく分かります。

で、この「フレンズ」 一人の例外もなく女の子。
別名アニマルガールですし。
更に「けものはいても、のけものはいない」という事か、
大体の「フレンズ」には友達や、
構ってくれる別種の「フレンズ」がいるので、
あなたはレズね!(アミメキリン並の推理) という視聴者も続出しました。

間違いなく2017年アニメの最高傑作で、
日本各地の動物園で入場者が激増したりと、
ちょっとした社会現象…
どころか、ある1頭のペンギンが世界中に愛されるなんて事態さえ起きました。
まさか本当にサンドスターが降ってくるなんて誰が想像できたでしょう。

なのに、あんな事になるなんて…
どうして…

・ポプテピピック(14、アニメ17末)
クソマンガ、かつクソアニメ。
で終わらせてしまうのも何なので。

理不尽と暴力とパロディをミキサーにかけて、
女子中学二年生二人を生み出した4コマ漫画です。
原作の時点でなんとなく世に知られ、しかし狭く深く突き刺さっていましたが、
キングレコードが金を注ぎ込み、
神風動画やAC部などが全力の方向音痴に突っ走ったアニメで、
2018年明けの話題を完全にかっさらいました。
アニメが終わってすぐにファンの多くは見えなくなったのですが。

元々は15分アニメ
→30分に
→じゃあ声優を変えて同じアニメを二回放映しよう
→せっかくだから前半女性声優、男性声優で行こう
→じゃあ大御所も呼ぼうぜ
→そこまでやるんだったらアニメも前後で変えてみよう
→オッケーだったら設定の根幹に組み込んでやる

という流れが本当にあったのかは分かりませんが、
ともかく結果的に凄まじい実験作になりました。
女子中学生二人に郷田ほづみと銀河万丈をキャスティングなんて発想は
一見すると狂気の沙汰ですが、意外と計算づくでもあった模様。

一方で百合ジャンルとして原作とアニメを見つめると
根本的には女子中学生二人が世界に中指を突き立てる話で、
原作者も間違いなく分かっていて百合に通じるときめきを組み込んでいます。

ポプ子はピピ美がいない世界では生きていけない
ピピ美はポプ子がいない世界を生かしておく理由がない
という、一心同体のようでいて絶妙にズレのある二人の間に、
原作の時点で百合を見出していた方々は狂人扱いされていたのですが、
実は彼らは全面的に正しかったという。

…そしてアニメ化の結果、
最終回でこのズレに別の意味が入ってしまって
暗闇の更に奥に引きずり込まれた方々もいました。

ポプ子じゃなくてピピ美だったのは
間違いなく狙いがあった筈です。

その3はこちら。すべてVtuberの話

2018年9月8日土曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その1

本編はこちらから

本当は紹介しないといけないのだけれど
その能力がないのでどうにもならなかった、という作品もいくつかあります。

実際の所「百合ジャンルの歴史」の関連記事として書いていますが
触ってみるきっかけだと思って気楽に読んで頂ければ。
では、やってみます。

・東方永夜抄(04)
Windows版第一作の『東方紅魔郷』が話題となり、
第二作『東方妖々夢』で既に大きなジャンルとなっていた東方シリーズの人気を
不動のものとしたのがこの『東方永夜抄』。

主人公が二人組×4(全員少女。少女(迫真))、
また敵役も魅力的な面子が揃って、
それまでの妄想勢力図を激変させた作品でもあります。
永夜抄以前はマリアリより霊アリの方が人気だった、なんて話が
当時からよく聞こえてきた位に。

この辺りから原作者公認の二次創作も勢いづき
ギャグ、シリアス、割合としては多くない18禁、音楽アレンジ、ゲーム
そして百合作品が堰を切ったように現れて、
この流れは2018年現在においてむしろ強くなりつつあります。
原作が10年以上定期的に投下され続け、
しかも二次創作公認のジャンルは現在でも東方くらいですし、
当然といえば当然なのかも。

何がきっかけで東方シリーズがここまで流行ったかは説明できないのですが、
「異世界」に「無数の少女(少女だって言ってるだろ!)」がいて、
好きな組み合わせで、好きなだけ公認で二次創作できて、
しかも男性を間に入れる必要が殆ど無い(やろうとすればできます)、
最初の巨大ジャンルだったのは間違いないです。

無数の女の子を好き勝手に二次創作できるジャンルは
それまでも存在していたのですが、
そこにほぼ一切男性が入らないのはおそらく東方が初めてだったはず。

なお永夜抄で最大の風評被害を受けたと思われるのが、
かのアリス・マーガトロイド嬢
(見た目も中身も少女ですが、設定によれば百歳は越えているらしい)。

永夜抄以降、ありとあらゆる種類の二次創作において、
出るだけでレズみたいな扱いを受ける事になり、
百合の供給と再生産、およびその受容に多大な役割を果たす事になります。

…〇〇先輩のようだ、と書くと袋叩きにされそう。
実は彼女の方がずっと先輩だったりするのも何とも。

もう一つ言及すべきなのが、東方と音楽の極めて強い結びつき。
原作者自身が音楽を聞いてほしいのでゲームを作っていると公言していますが
その質はずば抜けて高く、無数のアレンジが生まれています。

06年にはネタでないボーカル曲も作られ始め、
以降は明らかに百合を意識した曲も数多く現れています。
百合ジャンルの二次創作には様々な形態がありますが、
音楽や歌が一大勢力なのは東方とボーカロイド位です。

ここでは永夜抄を紹介しましたが、
外伝作品を含めても、何処からプレーしても問題なく世界観に入れます。
ただし『東方紺珠伝』はぶっちぎりで難しいらしいとか。

・ふたりはプリキュア(04)
元々女の子に人気のあった変身もの
×少年漫画のような友情、努力、戦い、そして勝利
=空前絶後の大爆発!!!

製作者の予想を遥かに超えて、
仮面ライダーやウルトラマンらと並ぶヒーローの一角となったシリーズです。
今となっては信じられないかも知れませんが、
シリーズ化するつもりは無かったんだそうで。

最初は二人組、
後のシリーズでは三人、五人、六人と人数が増えていきますが
少女達が戦いの中で色々ありつつ友情を育んでいくのは変わらず、
主目標の女の子達やそのご両親だけでなく、
老若男女に戦友の尊さを教えてくれるシリーズです。

それ以前にもスポ根もの等、
苦難の中で築かれる女性同士の友情を描く作品はありましたが、
命を懸けた「戦い」から生まれる絆を描いた画期として
やはりこのプリキュアシリーズは外せません。

…あまりにも有名な
「女の子だって暴れたい!」というキャッチフレーズは
実はドラゴンボールとかキン肉マンといった分野を任されていたスタッフが
いきなり女児向けアニメの現場に放り出されたので、
自分達のやり方でやってしまおうという開き直りから生まれたのだとか。

これがきっかけで、
日本の女児にとどまらず、世界のありとあらゆる女性が
「女の子だって暴れたい!」と思っていいんだと気付いたんだから
アニメってのはすごいなぁと。

・魔法少女リリカルなのは(04)
元々は「とらいあんぐるハート3」というゲームのスピンオフで、
これを原作として(別物の)深夜アニメを作ってみたら
製作者の予想を超える大ヒットに。
こちらも2018年現在に至るまでシリーズが続いています。

主人公(一応本当に9歳)とライバル(9歳)が
超科学じみた激しい魔法アクションの中で少しづつ距離を詰め、
最後に「なまえをよんで」終わる、
激突から生まれる友情を描いた物語です。

なお水樹奈々女史の歌手キャリアの起点でもあったり。
なのはシリーズのOPはいずれも名曲なので良かったらどうぞ。
特に二作目の「Eternal Blaze」は今でも彼女の大人気ナンバーです。

こちらは少女同士が切実な願いの為に衝突し、
その中で絆を生み出していく物語の画期となりました。
まどか☆マギカとかはおそらくこのシリーズがあってこその企画だったでしょう。

で、脚本の方はこの物語を「友情」を軸として描いていたらしいのですが、
視聴者はそこに強烈な「百合」を感じていました。
この辺、まだ「百合」とは何ぞやという問いにブレがあった事が伺えます。

…もう半分ネタバレしてしまいましたが
無印はできればこれ以上の事前情報無しで視聴してみてほしいです。
一クール作品屈指の名作なので。

あ、それと無機物萌えの方も是非。
会話可能な格好いい魔法の杖が大暴れします。

・舞-hime(04)
「サンライズ史上初の萌えアニメ」というキャッチコピーをぶち上げ
2クールかけて物語の隅々に張り巡らされた伏線が
事実上の最終話、25話における少女同士の〇〇に収束して、
視聴者の度肝を抜いた(そして26話で皆がひっくり返った)作品

…今となっては、どう考えても
25話を描きたかったから作ったアニメとしか思えないんですよね。
あの子もあの子もあやつもダミーだったんかいと。

ネタバレになってしまうので細かくは語れないのですが、
ガチレズなヤンデレ少女のとんでもなく強い想いと
ある事情で自分に向き合えなかった少女の決意が最後に交錯する
非常に鮮烈な物語でした。

後者は「恋愛」としては…と口にはしますが、
視聴者の解釈は様々。
劇中最強の想いだったのは論を俟たないでしょうが。

また一番目立ったのはこの二人でしたが、
例によって視聴者は他の少女同士の色々な繋がり、
例えば友情、激突などに、色々な組み合わせで「百合」を見出していました。
後者の少女に関しては他にも人気の組み合わせがあったり。

あ、それともう一人ガチの人もいます。

…実の所、この25話以上に美しい〇〇を
私見た事ないんですよね。
伏線の見事さを含めて一度誰かと思いっきり語ってみたいなぁ。

・ひだまりスケッチ(04)
美術高校に通う為に下宿生活を始める主人公の少女が
その寮友と共に送る日々を描いた4コマ漫画。
彼女達にはそれぞれの夢があり、その為の努力も描写されますが
中心となるのは何という事もない日々の生活です。

掲載誌であるまんがタイムきららの(2018年でも)看板作であり、
蒼樹うめてんてーの代表作。
原作の時点で人気でしたが、独特な演出に定評があるシャフトがアニメ化、
更に大きな支持を集めました。
なおうめてんてー×シャフトですが、3話で大変な事になったりはしません。

彼女達は一応違う部屋で下宿しているのですがとても仲がよく、
生活の大部分を共有していて、
実質一つ屋根の下で生活しているようなもので

…うん、普通にとても仲がいいだけではあります。
原作では、あくまで。

・らき☆すた(04)(アニメ07)
やたらハイスペックで重度の男性向け作品ヲタ、
そしてちんりくりんというエッジの効いた主人公の少女と、
その友達の少女達による日常系4コマ。
ヲタネタ、日常あるあるネタなどが噛み合っているのかいないのか
不思議な空気で展開される作品です。

こちらは京都アニメーションによるアニメ化でブレイク。
オープニングでいきなり踊りだしてえっ、となった原作ファンが
本編に入ったら大体漫画のノリで一安心、なんて事も。
主人公の中の人が前作(涼宮ハルヒの憂鬱)から上手く切り替えたのも
当時はちょっとした話題になったり。

原作は高校一年から卒業、その後まで描いて継続中。
アニメは二年生の途中まで描いています。
主人公が超マイペースな一方、ある理由から根が甘えん坊で、
積極的かつ少々不器用に友達に絡んでいくのが絶妙に妄想を喚起しました。
それと主人公以外にも仲良しさんは多かったり。

大ブレイクした涼宮ハルヒの憂鬱の後番組で制作会社も一緒という事で、
継続してみた視聴者、特に男性を百合妄想に引きずり込んだ作品でもあります。
一方、主人公のキャラ付けで伺えるように、
おそらく男性不在の男性向け作品として制作されたのですが、
しかし意外と…?

とはいえ後のけいおん! のように、
深夜の世界を飛び越えて同年代の少女に大当たり、とはいきませんでした。
日常を描くアニメという点では共通しているらき☆すたとけいおん! の違いは
一体何処にあるのでしょうか?
色々と考察の余地はありそうですが、ここでは論点を示すだけにしておきます。
真面目に考えるとこれはこれで面白そうなんですけどね。

・けいおん!(07)(アニメ09)
ある高校の軽音楽部に四人+後輩一人の女子生徒が集まり、
学園祭や新入生歓迎会でのライブを目指していく…
と書くとスポ根ものに思えるかもしれませんが、
実は日々のゆるい集まりを描いた日常系に近い作品。
京都アニメーションによるアニメ化で一気にブレイクしました。

主人公は設定されていますが 
「放課後ティータイム」と名付けられたバンドが話の中心。
顧問の先生や主人公の妹とかも登場しますが、人間関係はほぼ女性で完結します。
服飾、仕草、視線、空気…など、監督を始めとする女性スタッフの
徹底的な拘りが実って、ヲタクだけでなく世間の女子高生に大当たりしました。

無論アニメで現実ではないのだけれど
後一歩手を伸ばせば届くかもしれない、そんな等身大の青春を描ききって、
視聴者に強い印象を残しました。
少女中心の「萌えアニメ」から更に一歩先に進んだ、
おそらく最初のアニメです。

そしてこの少女達がある目的の為に集まって、
色々ありながらも結束していくという物語は、
「アイドル」という軸も合わさりつつラブライブ等に繋がっていきます。
実際直接流れた人もいるのですが、人数はどんなものかなぁ。

実の所この作品で、
青春に異性いなくてもいいんじゃね(いてもいいけど)、と思った方もいる筈。
恋愛するより楽しい時間があって、
そんな時間を分かち合える仲間がいるのって
何というか、本当にありがたくて尊いですよね。
…そんな感情が百合萌えとして解釈されるのも、ごくごく自然な流れでありました。

余談ですが、この京都アニメーションの徹底的なこだわりで
異性間を描写したのが『氷菓』
BLを狙ったのが『Free!』
GLを狙ったのが『響け、ユーフォニアム!』および外伝『リズと青い鳥』でした。
興味があったらこれらの作品を見てみるのも。