2018年9月8日土曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その1

本編はこちらから

本当は紹介しないといけないのだけれど
その能力がないのでどうにもならなかった、という作品もいくつかあります。

実際の所「百合ジャンルの歴史」の関連記事として書いていますが
触ってみるきっかけだと思って気楽に読んで頂ければ。
では、やってみます。

・東方永夜抄(04)
Windows版第一作の『東方紅魔郷』が話題となり、
第二作『東方妖々夢』で既に大きなジャンルとなっていた東方シリーズの人気を
不動のものとしたのがこの『東方永夜抄』。

主人公が二人組×4(全員少女。少女(迫真))、
また敵役も魅力的な面子が揃って、
それまでの妄想勢力図を激変させた作品でもあります。
永夜抄以前はマリアリより霊アリの方が人気だった、なんて話が
当時からよく聞こえてきた位に。

この辺りから原作者公認の二次創作も勢いづき
ギャグ、シリアス、割合としては多くない18禁、音楽アレンジ、ゲーム
そして百合作品が堰を切ったように現れて、
この流れは2018年現在においてむしろ強くなりつつあります。
原作が10年以上定期的に投下され続け、
しかも二次創作公認のジャンルは現在でも東方くらいですし、
当然といえば当然なのかも。

何がきっかけで東方シリーズがここまで流行ったかは説明できないのですが、
「異世界」に「無数の少女(少女だって言ってるだろ!)」がいて、
好きな組み合わせで、好きなだけ公認で二次創作できて、
しかも男性を間に入れる必要が殆ど無い(やろうとすればできます)、
最初の巨大ジャンルだったのは間違いないです。

無数の女の子を好き勝手に二次創作できるジャンルは
それまでも存在していたのですが、
そこにほぼ一切男性が入らないのはおそらく東方が初めてだったはず。

なお永夜抄で最大の風評被害を受けたと思われるのが、
かのアリス・マーガトロイド嬢
(見た目も中身も少女ですが、設定によれば百歳は越えているらしい)。

永夜抄以降、ありとあらゆる種類の二次創作において、
出るだけでレズみたいな扱いを受ける事になり、
百合の供給と再生産、およびその受容に多大な役割を果たす事になります。

…〇〇先輩のようだ、と書くと袋叩きにされそう。
実は彼女の方がずっと先輩だったりするのも何とも。

もう一つ言及すべきなのが、東方と音楽の極めて強い結びつき。
原作者自身が音楽を聞いてほしいのでゲームを作っていると公言していますが
その質はずば抜けて高く、無数のアレンジが生まれています。

06年にはネタでないボーカル曲も作られ始め、
以降は明らかに百合を意識した曲も数多く現れています。
百合ジャンルの二次創作には様々な形態がありますが、
音楽や歌が一大勢力なのは東方とボーカロイド位です。

ここでは永夜抄を紹介しましたが、
外伝作品を含めても、何処からプレーしても問題なく世界観に入れます。
ただし『東方紺珠伝』はぶっちぎりで難しいらしいとか。

・ふたりはプリキュア(04)
元々女の子に人気のあった変身もの
×少年漫画のような友情、努力、戦い、そして勝利
=空前絶後の大爆発!!!

製作者の予想を遥かに超えて、
仮面ライダーやウルトラマンらと並ぶヒーローの一角となったシリーズです。
今となっては信じられないかも知れませんが、
シリーズ化するつもりは無かったんだそうで。

最初は二人組、
後のシリーズでは三人、五人、六人と人数が増えていきますが
少女達が戦いの中で色々ありつつ友情を育んでいくのは変わらず、
主目標の女の子達やそのご両親だけでなく、
老若男女に戦友の尊さを教えてくれるシリーズです。

それ以前にもスポ根もの等、
苦難の中で築かれる女性同士の友情を描く作品はありましたが、
命を懸けた「戦い」から生まれる絆を描いた画期として
やはりこのプリキュアシリーズは外せません。

…あまりにも有名な
「女の子だって暴れたい!」というキャッチフレーズは
実はドラゴンボールとかキン肉マンといった分野を任されていたスタッフが
いきなり女児向けアニメの現場に放り出されたので、
自分達のやり方でやってしまおうという開き直りから生まれたのだとか。

これがきっかけで、
日本の女児にとどまらず、世界のありとあらゆる女性が
「女の子だって暴れたい!」と思っていいんだと気付いたんだから
アニメってのはすごいなぁと。

・魔法少女リリカルなのは(04)
元々は「とらいあんぐるハート3」というゲームのスピンオフで、
これを原作として(別物の)深夜アニメを作ってみたら
製作者の予想を超える大ヒットに。
こちらも2018年現在に至るまでシリーズが続いています。

主人公(一応本当に9歳)とライバル(9歳)が
超科学じみた激しい魔法アクションの中で少しづつ距離を詰め、
最後に「なまえをよんで」終わる、
激突から生まれる友情を描いた物語です。

なお水樹奈々女史の歌手キャリアの起点でもあったり。
なのはシリーズのOPはいずれも名曲なので良かったらどうぞ。
特に二作目の「Eternal Blaze」は今でも彼女の大人気ナンバーです。

こちらは少女同士が切実な願いの為に衝突し、
その中で絆を生み出していく物語の画期となりました。
まどか☆マギカとかはおそらくこのシリーズがあってこその企画だったでしょう。

で、脚本の方はこの物語を「友情」を軸として描いていたらしいのですが、
視聴者はそこに強烈な「百合」を感じていました。
この辺、まだ「百合」とは何ぞやという問いにブレがあった事が伺えます。

…もう半分ネタバレしてしまいましたが
無印はできればこれ以上の事前情報無しで視聴してみてほしいです。
一クール作品屈指の名作なので。

あ、それと無機物萌えの方も是非。
会話可能な格好いい魔法の杖が大暴れします。

・舞-hime(04)
「サンライズ史上初の萌えアニメ」というキャッチコピーをぶち上げ
2クールかけて物語の隅々に張り巡らされた伏線が
事実上の最終話、25話における少女同士の〇〇に収束して、
視聴者の度肝を抜いた(そして26話で皆がひっくり返った)作品

…今となっては、どう考えても
25話を描きたかったから作ったアニメとしか思えないんですよね。
あの子もあの子もあやつもダミーだったんかいと。

ネタバレになってしまうので細かくは語れないのですが、
ガチレズなヤンデレ少女のとんでもなく強い想いと
ある事情で自分に向き合えなかった少女の決意が最後に交錯する
非常に鮮烈な物語でした。

後者は「恋愛」としては…と口にはしますが、
視聴者の解釈は様々。
劇中最強の想いだったのは論を俟たないでしょうが。

また一番目立ったのはこの二人でしたが、
例によって視聴者は他の少女同士の色々な繋がり、
例えば友情、激突などに、色々な組み合わせで「百合」を見出していました。
後者の少女に関しては他にも人気の組み合わせがあったり。

あ、それともう一人ガチの人もいます。

…実の所、この25話以上に美しい〇〇を
私見た事ないんですよね。
伏線の見事さを含めて一度誰かと思いっきり語ってみたいなぁ。

・ひだまりスケッチ(04)
美術高校に通う為に下宿生活を始める主人公の少女が
その寮友と共に送る日々を描いた4コマ漫画。
彼女達にはそれぞれの夢があり、その為の努力も描写されますが
中心となるのは何という事もない日々の生活です。

掲載誌であるまんがタイムきららの(2018年でも)看板作であり、
蒼樹うめてんてーの代表作。
原作の時点で人気でしたが、独特な演出に定評があるシャフトがアニメ化、
更に大きな支持を集めました。
なおうめてんてー×シャフトですが、3話で大変な事になったりはしません。

彼女達は一応違う部屋で下宿しているのですがとても仲がよく、
生活の大部分を共有していて、
実質一つ屋根の下で生活しているようなもので

…うん、普通にとても仲がいいだけではあります。
原作では、あくまで。

・らき☆すた(04)(アニメ07)
やたらハイスペックで重度の男性向け作品ヲタ、
そしてちんりくりんというエッジの効いた主人公の少女と、
その友達の少女達による日常系4コマ。
ヲタネタ、日常あるあるネタなどが噛み合っているのかいないのか
不思議な空気で展開される作品です。

こちらは京都アニメーションによるアニメ化でブレイク。
オープニングでいきなり踊りだしてえっ、となった原作ファンが
本編に入ったら大体漫画のノリで一安心、なんて事も。
主人公の中の人が前作(涼宮ハルヒの憂鬱)から上手く切り替えたのも
当時はちょっとした話題になったり。

原作は高校一年から卒業、その後まで描いて継続中。
アニメは二年生の途中まで描いています。
主人公が超マイペースな一方、ある理由から根が甘えん坊で、
積極的かつ少々不器用に友達に絡んでいくのが絶妙に妄想を喚起しました。
それと主人公以外にも仲良しさんは多かったり。

大ブレイクした涼宮ハルヒの憂鬱の後番組で制作会社も一緒という事で、
継続してみた視聴者、特に男性を百合妄想に引きずり込んだ作品でもあります。
一方、主人公のキャラ付けで伺えるように、
おそらく男性不在の男性向け作品として制作されたのですが、
しかし意外と…?

とはいえ後のけいおん! のように、
深夜の世界を飛び越えて同年代の少女に大当たり、とはいきませんでした。
日常を描くアニメという点では共通しているらき☆すたとけいおん! の違いは
一体何処にあるのでしょうか?
色々と考察の余地はありそうですが、ここでは論点を示すだけにしておきます。
真面目に考えるとこれはこれで面白そうなんですけどね。

・けいおん!(07)(アニメ09)
ある高校の軽音楽部に四人+後輩一人の女子生徒が集まり、
学園祭や新入生歓迎会でのライブを目指していく…
と書くとスポ根ものに思えるかもしれませんが、
実は日々のゆるい集まりを描いた日常系に近い作品。
京都アニメーションによるアニメ化で一気にブレイクしました。

主人公は設定されていますが 
「放課後ティータイム」と名付けられたバンドが話の中心。
顧問の先生や主人公の妹とかも登場しますが、人間関係はほぼ女性で完結します。
服飾、仕草、視線、空気…など、監督を始めとする女性スタッフの
徹底的な拘りが実って、ヲタクだけでなく世間の女子高生に大当たりしました。

無論アニメで現実ではないのだけれど
後一歩手を伸ばせば届くかもしれない、そんな等身大の青春を描ききって、
視聴者に強い印象を残しました。
少女中心の「萌えアニメ」から更に一歩先に進んだ、
おそらく最初のアニメです。

そしてこの少女達がある目的の為に集まって、
色々ありながらも結束していくという物語は、
「アイドル」という軸も合わさりつつラブライブ等に繋がっていきます。
実際直接流れた人もいるのですが、人数はどんなものかなぁ。

実の所この作品で、
青春に異性いなくてもいいんじゃね(いてもいいけど)、と思った方もいる筈。
恋愛するより楽しい時間があって、
そんな時間を分かち合える仲間がいるのって
何というか、本当にありがたくて尊いですよね。
…そんな感情が百合萌えとして解釈されるのも、ごくごく自然な流れでありました。

余談ですが、この京都アニメーションの徹底的なこだわりで
異性間を描写したのが『氷菓』
BLを狙ったのが『Free!』
GLを狙ったのが『響け、ユーフォニアム!』および外伝『リズと青い鳥』でした。
興味があったらこれらの作品を見てみるのも。

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