2018年10月23日火曜日

2016-17シーズンから平昌五輪を挟んで現在までの男子フィギュアの流れ

ボーヤン・ジンが4Lzを着氷して始まった新次元クワド時代。
その一つの締めくくりとなったヘルシンキ世界選手権は、
4Lo4T4Sと他要素を完璧に揃えた羽生結弦が制覇。
4F4Lo4Tと他全部完璧(ただしgoeでちょっと羽生さんに及ばず)の宇野昌磨が二位。
4Lz4T4Sと他の要素普通以上のボーヤン・ジンが三位。
という結果に。

しかし4T4S他要素完璧のハビエル・フェルナンデスの威力は変わらず、
更に4Lz4F4T4Sとステップ完璧スピン普通以上のネイサン・チェン、
4T他要素完璧、ただし4Lz不安定のミハイル・コリヤダらが彼らを猛追。
4Lz4F4T4Sのヴィンセント・ジョウ、
4Lz4T滑り上手いドミトリー・アリエフらも続いて
平昌五輪への争いは混沌としていました。

その一方で様々な選手達が自分達の方法で少しでも上を狙った時代でもあります。
一時期飛んだ4Sを捨て4Tで最後の五輪に挑んだパトリック・チャン、
4Tと3Aと忙しない脚さばきで世界四位に食い込んだオレクシイ・ビチェンコ、
鉄板の4Tと3Aの威力でGPF出場、四位を掴んだセルゲイ・ヴォロノフ、
五輪で4Sを取り戻し本来の総合力で世界選手権に戻ってきたミハル・ブレジナ、
4Tを安定させスピンを急激に伸ばして五輪を勝ち取ったキーガン・メッシングら、
一種の四回転を軸に世界と渡り合うベテラン。

4Tや4Lz<も決めたけれども最終的には四回転抜きを選び
PCSで五輪に華を咲かせたアダム・リッポン、
4Tは間に合わなかったものの他完璧かつ異次元のジェイソン・ブラウン、
4Tに見切りをつけてステップとコレオに全てを賭けたミーシャ・ジー、
最初からクワドに目もくれずスケーティングで勝負したヨリック・ヘンドリックスら、
クワドなしで多種クワド選手達よりも高順位に入った選手。

4T4S4Lzと荒々しい勢いで五輪まで後一歩に迫ったアレクサンドル・サマリン、
4T4Sと総合力、ただし安定を欠くも五輪で揃えたダニエル・サモーヒンら、
多種クワドの威力で一気に世界に食い込む若手。

本当に多士済々といった感じで、
誰が五輪を制覇し誰が入賞するのか、
全然読めやしなかったのが平昌五輪でした。

結果的には怪我で4Loを欠いた羽生結弦が4T4S二つづつ(一つ乱れ)で優勝。
4Lo転倒も4Fと4T二つを降りた宇野昌磨が二位。
4Sが一つ2Sで吹き飛ぶも4T4S一つづつのフェルナンデスが三位に。
ただしネイサン・チェンが4T二つ4F二つ4S4Lz合計六クワドで
FS最高得点をもぎ取っています。

この後の世界選手権では、
五輪の無念を晴らしたネイサン・チェンがSPFSを揃えて優勝。
怪我しつつ強行出場した宇野昌磨が驚異の二位。
FSで上手くいかずも基礎技術で押し切ったミハイル・コリヤダが三位に。
一方で四回転一種(4T)でオレクシイ・ビチェンコが四位に入っています。

これで一つの区切りが付き、
五輪以前から公言されていた採点改正が行われて
初のシーズンとなるのが現在です。

ジャンプ、特に四回転の基礎点が下がる一方、
goeの幅が±3から±5となって+5を取れれば
旧採点以上の点が出せるようになりました。

また男子はFSのジャンプが8→7となり、
時間も4:30→4:00に短縮。
最後のジャンプで2Aとかを飛んでた選手は有利になりますが、
一方で時間短縮は体力への負担が極めて大きい模様です。

更にFSにおいて、
二回飛べる四回転は一種類だけになりました。
例えば4T二つ4S二つという構成はできなくなります。
二回飛ぶジャンプの一つは三回転になるので、
皆3A二つで行く…と思っていましたがそうでもない様子。

総じて高難度ジャンプの基礎点に依存する戦略は不利になり、
スピンやステップのgoeが重要性を増す形になります。
その上でトップを争う為には多種クワドを高いgoeで飛べ、と。

新しい採点基準に対する選手達の戦略は様々で、
4Loや4Lzを4Sに変更している選手やクワドを減らす選手がいる一方、
知った事かと言わんばかりにクワドマシマシで戦っている選手もいます。

元々選手達からすれば
やりたい事、目指すべき姿があって
その上でどうやって点を取るの勝負となっていたので
今の所、このルール変更で根本的にやり方を変えた選手はいません。
回転不足やエッジエラーの厳格化で苦戦している選手もいますが。

そしてGPS第一戦スケートアメリカが終わった時点で
新クワドを投入して飛躍する若手がバンバン出ていたり、
31歳の選手が4Loに挑戦したりと

やはりというか
限界を突き抜けようとする選手達の熱い闘志は
結局の所全く変わっていません。

五輪が終わってなお戦い続けるベテラン達
2022年の北京五輪を目指す中軸世代達
その更に先を見据える若手達が
今しのぎを削っています。

今季の世界選手権は日本、さいたまスーパーアリーナ。
総合力を要求するルールの下で
誰がどんな戦略で抜け出るのか。

今季も決着が付くまで
目を離せそうにありません。

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