2018年9月26日水曜日

2018-19シーズン、男子スケーターたちの展望1

さて、何を隠そう。
私は「2016-17シーズン、平昌五輪に挑む男子スケーター達のまとめ と現在に至るフィギュアの流れ とその流れを作った名選手達」や
ユーリ!!!ON ICEを見た人々に贈る、 男子フィギュアスケーター紹介本
とかを作った人間です。

2018-19シーズンへのまとめは作ります。
出来ればpdfも現在の内容に合わせて大幅に書き換えたい。

という事で、ここに下書きを書いていこうかなと。
1ツイート分と一ページ分、どっちにも対応できるように。
下書きゆえのとりとめなさはご容赦を!

羽生結弦(日本)
https://www.youtube.com/watch?v=M8XcybBTUxc

王道と覇道を極め、第三の道を拓く
五輪連覇、異次元の最高得点更新、世界初の4Lo戦力投入
フィギュアスケートの歴史を変えて向かうは
永遠の憧れへの挑戦であった

既にあらゆる要素も表現力も世界一
しかしまだ何もかも足りない
今最も燃えている男

怪我から復活しての五輪連覇。
男子フィギュアスケートの最高得点大幅更新。
世界初の4Lo完全着氷および戦力投入。
フィギュアスケートに無数の伝説を打ち立て、
ここからは自分の為に四回転アクセルを決めたい、やりたい事をしたい…
と公言していたのですが。

しかし彼は最も難しい挑戦を見つけてしまいました。
永遠の憧れであるプログラム「秋によせて」と「ニジンスキーに捧ぐ」、
ジョニー・ウィアーとエフゲニー・プルシェンコの精髄に一歩でも近づくのだと。
そして2018-19シーズンの初陣、
上手くいかなかったオータムクラシックで決意するのです。
「全てが足りない」と。

選手としての長所は全部。
…もう少し書くと、三種類の四回転を含む高く美しく流れるようなジャンプ。
レベルでは測れない技術の粋を尽くしたスピン。
誰が見てもその質がわかる音と氷に一致したステップ。
安倍晴明とプリンスを演じ分ける表現力。
フィギュアスケートに関わる全てが世界超一流です。
特にアクセルは他の追随を許さぬ圧倒的な質があり、
決まれば世界初となる四回転アクセルにも目処が立ちつつあるのだとか。

でも「全てが足りない」と本人は決心しています。
果てを極めた暁にはプロトコルがgoe5で埋まる事でしょう。

演技を一つ選べ…と言われるとたくさんありすぎて難しいのですが。
ここでは平昌五輪SP「バラード第一番」、通称バラ一をご紹介。
怪我明けからの準備期間は二ヶ月あるかないかで、
流石の彼でもこの短期間では難しいのでは…
と思わせてからのほぼ完璧な演技。

しかしそれは「勝つために全てを捨てた」と本人が語ったように
頂点は競技を進化させねばならぬという信念、
その象徴でもある新ジャンプ4Loを断念した結果でもありました。

羽生結弦は常に頂点に立つ為に戦っています。
ですが、五輪では勝つ事のみを優先せざるを得なかった。
それを踏まえるとまた違うものが見えてくるかもしれません。

…一方、勝利を最優先した結果がFS「SEIMEI」での四回転四本、
しかも決まれば五輪史上初になった4Tからのハーフループコンボだった
(本番では着氷ミスでコンボにならず、3Aに付け替えました)
のがフィギュアスケートという競技の恐ろしさだなぁとも。
安全策で四回転四本を要求されるなんて…。


と、こんな感じで
今季競技に挑む選手達の紹介を書いていくつもりです。
Twitterの方はリンク込みで140字。
pdf用はB5で一ページを想定、900字で略歴、特徴、お勧め演技の三つを書きます。
この字数だと寄り道も出来るのでしていこうかなと。

実際の文章はここから色々書き換えるんじゃないかなー
良かったら以後もお付き合いを!

2018年9月23日日曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その3 あるいはかえみと論考

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・Vtuber(17末、にじさんじ18)
というより実質にじさんじ、もっと言えばかえみと。
現状pixivで圧倒的に強いのはこの二人です。
おそらくtwitterでも。

そもそもVtuber、バーチャルユーチューバーとは何ぞや。
現在進行系の現象なので色々と論じ方はあると思いますが、
結論から言えば2Dあるいは3Dのアバターを着てる配信者です。

ただ彼らの多くがYoutubeを活動拠点としているので、
Youtuberの一種とみなされる事が多いのですが、
実はそれ以外の場、例えばtwitterとかでも活動しているので
「配信者」と定義してみました。

実際の所、元々有名人だったり、イラストレーターだったり、
ミュージシャンだったりといった背景を持つ事なく、
発言が面白かったり、考察が鋭かったり、行動が奇矯だったりと、
twitter上の活動だけで有名になったアカウントが結構いるのですが、
(アルファツイッタラーなんて言い回しもあります)
そんなSNSだけで有名になれるような元々面白い人々が、
アバターを獲得して大ブレイクしたのがVtuberだと私は認識しています。
少なくともヒットしているVtuberに関しては。

で、ここからが本題。
SNSにおけるアカウント同士の間柄に百合が見出されたのは、
実はVtuberが最初ではなかったりします。

艦隊これくしょんのなりきりアカウント同士(二人とも女性キャラ)で、
思いを打ち明け、受け入れられたという出来事がありました。
結構少なくない人々の記憶に残っている彼女達は、
その後アカウントを消してしまい、アーカイブも残さなかったので、
アルペジオのように電子の海に去っていってしまったのですが。

もう彼女達の名前を使っても検索すらできなくなった二人の間柄には、
確かに百合へと繋がるものがあった筈です。
そこには原作への愛があって、
現在進行系で進展していた間柄があり、
その進展を共有していた人々がいました。

それから数年経って。
最初に月ノ美兎がその強烈な中身でブレイク。
その後彼女が築いた橋頭堡から、
Vtuberグループ「にじさんじ」が世に出てきます。
で、月ノ美兎自身もその一員として動画配信でコラボもしているのですが。

始まりがいつだったのかは分かりません。
元々仲が良かったのか、配信中に気が合ったのかも。
しかしいつの間にか月ノ美兎と樋口楓は一番の仲良しさんになり、
この二人で何かする時が最も盛り上がるようになりました。

Vtuberというガワがあるのでわかりにくくはあるのですが、
面白い人達が一人、二人、ないし多人数で愉快な事をして
(バカな事、と言ってもいいかもしれません。勿論褒め言葉)
彼ら自身も視聴者も一緒に楽しんでいるのが流行りの本質です。

で、バーチャルに限った話でもなく。
二人でいっぱい楽しい事をすれば仲良しにもなるよね。

そんな訳で、まあ何というか色々と愉快なコトをしつつ
少女(とあえて書きます)二人がリアルタイムで接近していくのを、
視聴者は現在進行系で共有する事になりました。
というか今この瞬間にしてます。

SNS上で…というのはそんなに重要ではないのですが、
二人の間柄が進展していくのを共有する経験は、
おそらく多くの視聴者にとって非常に新鮮なものでした。

バーチャルキャラ同士なのに
間柄の進展はリアルよりもリアルという
何とも奇々怪々な現象がそこにはあります。

更に、かえみとのような類型が
百合ジャンルにおいて大当たりした組み合わせには無かったのも
百合ファンにとっての新しさがあったのだと思います。

ざっくりと切り分けてしまうと、かえみとって、
ワトソンとホームズの間柄に似てるんですが。
こういう類型の組み合わせって、
そういえば大きいジャンルには無かったように思えます。
ちなみにハドソン夫人が静凛で、
モリアーティ教授は…誰だろう?

親友…ともちょっと違う、
不均衡のあるバディというか、戦友というか。
(何でもサイドキックという呼び名があるんだそうです)
ワトソンだけでは大人気シリーズにはならなかったのでしょうが、
しかしホームズはワトソンがいないと始まらない、
かえみともそんな間柄に思えます。

で、再び論を引き戻して。
Vtuberの本質はガワを被った元々面白い人々と書きました。
しかし彼らは、活動を止めてしまうと急速に忘れ去られてしまう
どうにも避けがたい宿命を背負った存在でもあります。
良くも悪くも刹那において最も輝けるのが人気アカウントであり、
Vtuberもその延長線にあります。

ずっとずっと二人では走れない。
どこかで必ず終わりが来ます。

仮ににじさんじが活動停止後にアーカイブを残しても、
(多分残さないと思います)
我々に出来るのは追体験だけで、
二人が接近していく刹那は共有できない。

SNS上での間柄の進展、そこにあるときめきは、
現在進行系である事が生命線です。
過去形になってしまうと後世への伝達が極めて困難になるでしょう。
実際に検索すらできなくなったケースを私は紹介しました。

イラストとか小説とか薄い本とかの二次創作は残る筈。
しかしそこから当時の熱をどれだけサルベージできるのか。

ときめきは今そこにあります。
しかし後に残せるのか。
そもそも無くなってしまった刹那を残す必要があるのか。

後になって残るのは、
写真…もとい二次創作だけ、という事になるかもしれません。
ジャンルの栄枯盛衰はどこにも例外なくあるのですが、
Vtuberはそれが極端に激しくなる予感が、実の所すごくします。

例えば10年後、今の事情を知らない人々に、
どう説明すればいいんだろうなぁ。

もし、後に伝えたいのならば。
今から何か方法を考える必要はあるでしょう。
とても大変でしょうけれど…

2018年9月10日月曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その2

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・魔法少女まどか☆マギカ(11)
脚本の名前で皆嫌な予感はしていましたが、
実際キャラデザで釣られた視聴者を地獄に叩き落とした、
残酷な運命に5人の少女(劇場版で+1)が立ち向かう物語。
切実な願いを悪意に踏みにじられながら、
あがき続ける少女達。
そして主人公が最後に出した答えは…

強引な掴みが最初に話題になりましたが、
物語の全貌が少しづつ見え始め、
オープニングが誰の言葉なのかわかった時の感覚は、
おそらく実際に視聴しないと分からないかと。

…それまで主人公は 「お前何の為に存在してるん」と思われてたりしていました。
最終話までには皆がごめんなさいしたけれど。

百合ジャンルの中でも
これほどむき出しの生死が牙を剥いてくる作品は珍しく、
それ故に少女同士の絆も印象的。
なお作中でカタストロフが起きる前に現実世界で大災害が起きてしまい
最終回の放映がしばし自粛されたりも。

このアニメの外伝にあたるスマホゲーム
『マギアレコード』も2019年のアニメ化が決定。
こちらは(百合ファンも含めて)比較的狭く深くで突き刺さっていたのですが、
さて、アニメ化でどうなるやら。

・ガールズ&パンツァー(13)(劇場版15)
廃校の危機を迎えた学校が
ある競技の強豪から転校してきた主人公を中心とし、
学校存続の為に全国大会制覇を目指す物語。

ただしその競技は実弾の飛び交う戦車軍団同士の戦闘。

これだけ見ると何が何だか分からないでしょうが、
濃いミリタリーネタを挟みつつも、
最初は自身の境遇に戸惑っていた主人公が多くの仲間達に支えられ、
自らの意志で競技に戻っていく実に王道な物語です。

大怪我とかは無いよ?
いや、本当に無いですって。

こちらも最終回放映までにすったもんだがありましたが無事完結。
更に劇場版も上映され、これが素晴らしい出来で大ブレイク。
特に女性ファンは劇場版から入った者も多い模様です。

…あるキャラが劇場版以降、急に注目され始め、
二次創作で色々と変な属性を付けられたり。
舞台となった大洗町に多数のファンが詰めかけ、
彼の地の魅力が再評価され、経済が大いに潤ったりと、
場外で色々な現象が起きた作品でもあります。

元々大洗町が観光地として魅力的だった事もあって、
アニメによる「聖地巡礼」が注目されるきっかけともなりました。

2018年現在、完結編が制作されている模様。
どうなるかな。

・THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS(11)(アニメ15)
通称デレマス。二次元アイドルブームの火付け役、
アイドルマスターシリーズを下敷きにしたスマホゲーム。
一つの世界観に無数の女性キャラを登場させて大当たりした、
おそらく二つ目のジャンルです。
(一つ目は東方で三つ目は艦これ)

プレイヤー=主人公のプロデューサーはほぼ男性と思われていますが、
百合ファンはそんなもの知った事かと言わんばかりに
アイドルであるキャラ同士の組み合わせを無数に見つけていきました。

元祖の人気もあって元々隠然たる勢力がありましたが、
火がついたのはアニメ以降。
(ハーフの彼女が普通に日本語喋った事があったのは黒歴史になったとか)
プレイヤーが想像もしていなかった組み合わせも数多く提示され、
2018年現在でも熱い人気を見せています。

私的にアイドル達に関われなくもないが、
まずそんな事しなさそうなアニメの男性Pの味付けも絶妙でした。
おかげで百合も×男性Pも捗ったのだそうで。

…一方、現在深刻な社会問題になりつつある
ゲームへの想像を絶する課金が発生し始めたのもこの作品。
あったなぁ、課金兵なんて言葉。
言葉は見なくなっても現象が更に過激化するなんて…

そして、2~30代の女性に声をかけ、
アイドルとして大成させる事が可能なゲームだったりもします。
おそらく多数のキャラを出すにあたって、ありとあらゆる特性を試す中で 
(プレイヤーにとって)年上のおねーさんへの需要を狙ったのでしょうが、
これも思わぬ方向に当たっています。

百合ジャンルの歴史においては、
百合の鉱脈は少女同士だけではなく、
大人の女性同士、あるいは大人と少女の間にも存在する事を
おそらく最初に示したジャンルでもあります。
(もちろんこれ以前にもそういう作品は多数あったでしょう)
ファーストインパクトこそ艦これに持っていかれましたが、
アニメ化をきっかけにその意義が大いに注目され、
今日も非常に活発なジャンルになっているのは先述の通り。
20代後半が明言されてるキャラ同士の組み合わせがジャンルになったのは
デレマスが最初の筈。

後続作品のシャイニーカラーズは、
2018年現在、まだコンテンツそのものが大当たりはしていない模様。
やはりアニメ化待ちになるのでしょうか。
…ただ、最年長が現状23歳(しかも一人。20代ですら二人だけ)なのは、
そのずっと上の女性を当ててるコンテンツの後継作として
ちょっと痛手になる予感も。

・ラブライブ!(10)(アニメ、ゲーム13)
元々は2010年の雑誌企画で、CD、漫画(11)ライブ(11)の成功を経て、
アニメ(13)で一気に爆発。
学校生活の中でアマチュアとしてアイドル活動を行う
「スクールアイドル」の概念をぶち上げたシリーズです。

初めは学校存続の為に始めたスクールアイドル活動を通じ、
少女達が集い、時にすれ違いつつも、
最終的に九人全員が主人公として結束していく物語で、
社会現象になるくらい多くの「ラブライバー」を生み出しました。

製作者の予想を遥かに超えてヒットした作品でもあり、
その中には大量の女性ファン、更に百合ファンも含まれています。
(間違いなくこんなに女性に当たるとは思ってなかった筈)
男性と女性で人気の組み合わせが大きく異なる事、
百合二次創作している人数はおそらく女性の方が多いのも前述の通り。
この作品はネタバレの意味が殆ど無いので名前を出すと、
にこまきとのぞえりは女性人気が半端なく強いですし、
二次創作してる方の多くも女性です。
この組み合わせが人気な理由が分かると、
女性に当たる百合の何たるかも分かるかもしれません。
ちなみに私はまだ学んでいる段階です。

特に女性にとっては東方に続く第二の巨大百合ジャンルです。
男性はμ's、ないしAquorsをアイドルとして追いかけもしますが、
女性は比較的中に入りやすい(無論、外から見ている人もいる)分、
そこで描写されるときめきは女性により強く響くのかも。

…男性目線からすると、
明白な主人公がいるわけではないので、
一体化の方向で行くとちょっと難しいんですよね。
出来ない訳ではないんですが。

ちなみに無印の組み合わせ一番人気は三年生と一年生、
具体的には先述のにこまきなのですが、
そこには先輩後輩の文脈は殆ど無いです。
これはマリみてにおける超然とした存在への「憧れ」を起点とし、
様々な感情へ分化した百合において実は非常に特異かつ画期的だったりも。

いや「憧れ」が絡んでないわけではないのですが、
マリみてにおける高嶺の花への憧れではなくて、
もっとこう、何というか…
年が離れた級友なので距離そのものはずっと近いんですが、
決定的に自分とは違うものをお互いに持っていると言えばいいのか。

要は15年経って、百合へのときめきが
すごくすごく多様化したという話でございます。

・アイカツ!(12)
就学前の女の子をターゲットにし、
プリキュアのシリーズ化に成功したバンダイなどが
その少し上の年代を狙った企画。
トップスターを狙う少女達がその養成校に入って
妙な事もしつつ明るく楽しく頑張っていく物語です。

やはり少女同士の絆がアニメなどでガッツリ描写され、
メインターゲットである小学生女子のみならず、
中学、高校…どころか青年層の女性にも大ヒット。

そしてプリキュア同様、
このアイカツやプリパラが撒いた種は、
他の百合ジャンルへと入っていくきっかけともなっています。

というか、子供にとっては
ラブライブがアイカツの続編に見えるってのは、
言われてみれば分かるけど、意外でした…

・けものフレンズ(15)(アニメ17)
ヒトっぽくなった動物「フレンズ」達の集う、
でっかい動物園ジャパリパークで
よく分からない怪物「セルリアン」に脅かされつつ
フレンズ達と共にドッタンバッタン大騒ぎする、
一見すれば呑気で優しい世界での物語。

元はゲームが中心の企画でした。
アニメ化に際して色々世界観が書き足されています。

このジャパリパークを舞台に、
一切の記憶がない主人公があるフレンズと二人でパークを巡り、
総じてお人好しでちょっと抜けてる様々なフレンズに出会い、
彼らの問題を解決しつつ、自分が何者かを見つけて…

そこまで考えなくても 「すっごーい!」「たーのしー!」アニメです。

1話で主人公同様、視聴者も何が何だかな状況に放り込まれますが
2話でおや、となり
3話ではすっかり引きずり込まれてしまう
極めて優れた脚本と構成に、
一歩間違えるとチープになりかねない絵面が上手く嵌った
色々な意味で奇跡みたいな作品です。
見るなら必ず最後までどうぞ。
物語ってのはやっぱ脚本と構成なのねってのが本当によく分かります。

で、この「フレンズ」 一人の例外もなく女の子。
別名アニマルガールですし。
更に「けものはいても、のけものはいない」という事か、
大体の「フレンズ」には友達や、
構ってくれる別種の「フレンズ」がいるので、
あなたはレズね!(アミメキリン並の推理) という視聴者も続出しました。

間違いなく2017年アニメの最高傑作で、
日本各地の動物園で入場者が激増したりと、
ちょっとした社会現象…
どころか、ある1頭のペンギンが世界中に愛されるなんて事態さえ起きました。
まさか本当にサンドスターが降ってくるなんて誰が想像できたでしょう。

なのに、あんな事になるなんて…
どうして…

・ポプテピピック(14、アニメ17末)
クソマンガ、かつクソアニメ。
で終わらせてしまうのも何なので。

理不尽と暴力とパロディをミキサーにかけて、
女子中学二年生二人を生み出した4コマ漫画です。
原作の時点でなんとなく世に知られ、しかし狭く深く突き刺さっていましたが、
キングレコードが金を注ぎ込み、
神風動画やAC部などが全力の方向音痴に突っ走ったアニメで、
2018年明けの話題を完全にかっさらいました。
アニメが終わってすぐにファンの多くは見えなくなったのですが。

元々は15分アニメ
→30分に
→じゃあ声優を変えて同じアニメを二回放映しよう
→せっかくだから前半女性声優、男性声優で行こう
→じゃあ大御所も呼ぼうぜ
→そこまでやるんだったらアニメも前後で変えてみよう
→オッケーだったら設定の根幹に組み込んでやる

という流れが本当にあったのかは分かりませんが、
ともかく結果的に凄まじい実験作になりました。
女子中学生二人に郷田ほづみと銀河万丈をキャスティングなんて発想は
一見すると狂気の沙汰ですが、意外と計算づくでもあった模様。

一方で百合ジャンルとして原作とアニメを見つめると
根本的には女子中学生二人が世界に中指を突き立てる話で、
原作者も間違いなく分かっていて百合に通じるときめきを組み込んでいます。

ポプ子はピピ美がいない世界では生きていけない
ピピ美はポプ子がいない世界を生かしておく理由がない
という、一心同体のようでいて絶妙にズレのある二人の間に、
原作の時点で百合を見出していた方々は狂人扱いされていたのですが、
実は彼らは全面的に正しかったという。

…そしてアニメ化の結果、
最終回でこのズレに別の意味が入ってしまって
暗闇の更に奥に引きずり込まれた方々もいました。

ポプ子じゃなくてピピ美だったのは
間違いなく狙いがあった筈です。

その3はこちら。すべてVtuberの話

2018年9月8日土曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その1

本編はこちらから

本当は紹介しないといけないのだけれど
その能力がないのでどうにもならなかった、という作品もいくつかあります。

実際の所「百合ジャンルの歴史」の関連記事として書いていますが
触ってみるきっかけだと思って気楽に読んで頂ければ。
では、やってみます。

・東方永夜抄(04)
Windows版第一作の『東方紅魔郷』が話題となり、
第二作『東方妖々夢』で既に大きなジャンルとなっていた東方シリーズの人気を
不動のものとしたのがこの『東方永夜抄』。

主人公が二人組×4(全員少女。少女(迫真))、
また敵役も魅力的な面子が揃って、
それまでの妄想勢力図を激変させた作品でもあります。
永夜抄以前はマリアリより霊アリの方が人気だった、なんて話が
当時からよく聞こえてきた位に。

この辺りから原作者公認の二次創作も勢いづき
ギャグ、シリアス、割合としては多くない18禁、音楽アレンジ、ゲーム
そして百合作品が堰を切ったように現れて、
この流れは2018年現在においてむしろ強くなりつつあります。
原作が10年以上定期的に投下され続け、
しかも二次創作公認のジャンルは現在でも東方くらいですし、
当然といえば当然なのかも。

何がきっかけで東方シリーズがここまで流行ったかは説明できないのですが、
「異世界」に「無数の少女(少女だって言ってるだろ!)」がいて、
好きな組み合わせで、好きなだけ公認で二次創作できて、
しかも男性を間に入れる必要が殆ど無い(やろうとすればできます)、
最初の巨大ジャンルだったのは間違いないです。

無数の女の子を好き勝手に二次創作できるジャンルは
それまでも存在していたのですが、
そこにほぼ一切男性が入らないのはおそらく東方が初めてだったはず。

なお永夜抄で最大の風評被害を受けたと思われるのが、
かのアリス・マーガトロイド嬢
(見た目も中身も少女ですが、設定によれば百歳は越えているらしい)。

永夜抄以降、ありとあらゆる種類の二次創作において、
出るだけでレズみたいな扱いを受ける事になり、
百合の供給と再生産、およびその受容に多大な役割を果たす事になります。

…〇〇先輩のようだ、と書くと袋叩きにされそう。
実は彼女の方がずっと先輩だったりするのも何とも。

もう一つ言及すべきなのが、東方と音楽の極めて強い結びつき。
原作者自身が音楽を聞いてほしいのでゲームを作っていると公言していますが
その質はずば抜けて高く、無数のアレンジが生まれています。

06年にはネタでないボーカル曲も作られ始め、
以降は明らかに百合を意識した曲も数多く現れています。
百合ジャンルの二次創作には様々な形態がありますが、
音楽や歌が一大勢力なのは東方とボーカロイド位です。

ここでは永夜抄を紹介しましたが、
外伝作品を含めても、何処からプレーしても問題なく世界観に入れます。
ただし『東方紺珠伝』はぶっちぎりで難しいらしいとか。

・ふたりはプリキュア(04)
元々女の子に人気のあった変身もの
×少年漫画のような友情、努力、戦い、そして勝利
=空前絶後の大爆発!!!

製作者の予想を遥かに超えて、
仮面ライダーやウルトラマンらと並ぶヒーローの一角となったシリーズです。
今となっては信じられないかも知れませんが、
シリーズ化するつもりは無かったんだそうで。

最初は二人組、
後のシリーズでは三人、五人、六人と人数が増えていきますが
少女達が戦いの中で色々ありつつ友情を育んでいくのは変わらず、
主目標の女の子達やそのご両親だけでなく、
老若男女に戦友の尊さを教えてくれるシリーズです。

それ以前にもスポ根もの等、
苦難の中で築かれる女性同士の友情を描く作品はありましたが、
命を懸けた「戦い」から生まれる絆を描いた画期として
やはりこのプリキュアシリーズは外せません。

…あまりにも有名な
「女の子だって暴れたい!」というキャッチフレーズは
実はドラゴンボールとかキン肉マンといった分野を任されていたスタッフが
いきなり女児向けアニメの現場に放り出されたので、
自分達のやり方でやってしまおうという開き直りから生まれたのだとか。

これがきっかけで、
日本の女児にとどまらず、世界のありとあらゆる女性が
「女の子だって暴れたい!」と思っていいんだと気付いたんだから
アニメってのはすごいなぁと。

・魔法少女リリカルなのは(04)
元々は「とらいあんぐるハート3」というゲームのスピンオフで、
これを原作として(別物の)深夜アニメを作ってみたら
製作者の予想を超える大ヒットに。
こちらも2018年現在に至るまでシリーズが続いています。

主人公(一応本当に9歳)とライバル(9歳)が
超科学じみた激しい魔法アクションの中で少しづつ距離を詰め、
最後に「なまえをよんで」終わる、
激突から生まれる友情を描いた物語です。

なお水樹奈々女史の歌手キャリアの起点でもあったり。
なのはシリーズのOPはいずれも名曲なので良かったらどうぞ。
特に二作目の「Eternal Blaze」は今でも彼女の大人気ナンバーです。

こちらは少女同士が切実な願いの為に衝突し、
その中で絆を生み出していく物語の画期となりました。
まどか☆マギカとかはおそらくこのシリーズがあってこその企画だったでしょう。

で、脚本の方はこの物語を「友情」を軸として描いていたらしいのですが、
視聴者はそこに強烈な「百合」を感じていました。
この辺、まだ「百合」とは何ぞやという問いにブレがあった事が伺えます。

…もう半分ネタバレしてしまいましたが
無印はできればこれ以上の事前情報無しで視聴してみてほしいです。
一クール作品屈指の名作なので。

あ、それと無機物萌えの方も是非。
会話可能な格好いい魔法の杖が大暴れします。

・舞-hime(04)
「サンライズ史上初の萌えアニメ」というキャッチコピーをぶち上げ
2クールかけて物語の隅々に張り巡らされた伏線が
事実上の最終話、25話における少女同士の〇〇に収束して、
視聴者の度肝を抜いた(そして26話で皆がひっくり返った)作品

…今となっては、どう考えても
25話を描きたかったから作ったアニメとしか思えないんですよね。
あの子もあの子もあやつもダミーだったんかいと。

ネタバレになってしまうので細かくは語れないのですが、
ガチレズなヤンデレ少女のとんでもなく強い想いと
ある事情で自分に向き合えなかった少女の決意が最後に交錯する
非常に鮮烈な物語でした。

後者は「恋愛」としては…と口にはしますが、
視聴者の解釈は様々。
劇中最強の想いだったのは論を俟たないでしょうが。

また一番目立ったのはこの二人でしたが、
例によって視聴者は他の少女同士の色々な繋がり、
例えば友情、激突などに、色々な組み合わせで「百合」を見出していました。
後者の少女に関しては他にも人気の組み合わせがあったり。

あ、それともう一人ガチの人もいます。

…実の所、この25話以上に美しい〇〇を
私見た事ないんですよね。
伏線の見事さを含めて一度誰かと思いっきり語ってみたいなぁ。

・ひだまりスケッチ(04)
美術高校に通う為に下宿生活を始める主人公の少女が
その寮友と共に送る日々を描いた4コマ漫画。
彼女達にはそれぞれの夢があり、その為の努力も描写されますが
中心となるのは何という事もない日々の生活です。

掲載誌であるまんがタイムきららの(2018年でも)看板作であり、
蒼樹うめてんてーの代表作。
原作の時点で人気でしたが、独特な演出に定評があるシャフトがアニメ化、
更に大きな支持を集めました。
なおうめてんてー×シャフトですが、3話で大変な事になったりはしません。

彼女達は一応違う部屋で下宿しているのですがとても仲がよく、
生活の大部分を共有していて、
実質一つ屋根の下で生活しているようなもので

…うん、普通にとても仲がいいだけではあります。
原作では、あくまで。

・らき☆すた(04)(アニメ07)
やたらハイスペックで重度の男性向け作品ヲタ、
そしてちんりくりんというエッジの効いた主人公の少女と、
その友達の少女達による日常系4コマ。
ヲタネタ、日常あるあるネタなどが噛み合っているのかいないのか
不思議な空気で展開される作品です。

こちらは京都アニメーションによるアニメ化でブレイク。
オープニングでいきなり踊りだしてえっ、となった原作ファンが
本編に入ったら大体漫画のノリで一安心、なんて事も。
主人公の中の人が前作(涼宮ハルヒの憂鬱)から上手く切り替えたのも
当時はちょっとした話題になったり。

原作は高校一年から卒業、その後まで描いて継続中。
アニメは二年生の途中まで描いています。
主人公が超マイペースな一方、ある理由から根が甘えん坊で、
積極的かつ少々不器用に友達に絡んでいくのが絶妙に妄想を喚起しました。
それと主人公以外にも仲良しさんは多かったり。

大ブレイクした涼宮ハルヒの憂鬱の後番組で制作会社も一緒という事で、
継続してみた視聴者、特に男性を百合妄想に引きずり込んだ作品でもあります。
一方、主人公のキャラ付けで伺えるように、
おそらく男性不在の男性向け作品として制作されたのですが、
しかし意外と…?

とはいえ後のけいおん! のように、
深夜の世界を飛び越えて同年代の少女に大当たり、とはいきませんでした。
日常を描くアニメという点では共通しているらき☆すたとけいおん! の違いは
一体何処にあるのでしょうか?
色々と考察の余地はありそうですが、ここでは論点を示すだけにしておきます。
真面目に考えるとこれはこれで面白そうなんですけどね。

・けいおん!(07)(アニメ09)
ある高校の軽音楽部に四人+後輩一人の女子生徒が集まり、
学園祭や新入生歓迎会でのライブを目指していく…
と書くとスポ根ものに思えるかもしれませんが、
実は日々のゆるい集まりを描いた日常系に近い作品。
京都アニメーションによるアニメ化で一気にブレイクしました。

主人公は設定されていますが 
「放課後ティータイム」と名付けられたバンドが話の中心。
顧問の先生や主人公の妹とかも登場しますが、人間関係はほぼ女性で完結します。
服飾、仕草、視線、空気…など、監督を始めとする女性スタッフの
徹底的な拘りが実って、ヲタクだけでなく世間の女子高生に大当たりしました。

無論アニメで現実ではないのだけれど
後一歩手を伸ばせば届くかもしれない、そんな等身大の青春を描ききって、
視聴者に強い印象を残しました。
少女中心の「萌えアニメ」から更に一歩先に進んだ、
おそらく最初のアニメです。

そしてこの少女達がある目的の為に集まって、
色々ありながらも結束していくという物語は、
「アイドル」という軸も合わさりつつラブライブ等に繋がっていきます。
実際直接流れた人もいるのですが、人数はどんなものかなぁ。

実の所この作品で、
青春に異性いなくてもいいんじゃね(いてもいいけど)、と思った方もいる筈。
恋愛するより楽しい時間があって、
そんな時間を分かち合える仲間がいるのって
何というか、本当にありがたくて尊いですよね。
…そんな感情が百合萌えとして解釈されるのも、ごくごく自然な流れでありました。

余談ですが、この京都アニメーションの徹底的なこだわりで
異性間を描写したのが『氷菓』
BLを狙ったのが『Free!』
GLを狙ったのが『響け、ユーフォニアム!』および外伝『リズと青い鳥』でした。
興味があったらこれらの作品を見てみるのも。

2018年9月4日火曜日

百合ジャンルの歴史 その3

その2はこちら

第九章 海の向こうから

アナ雪が出てきた文脈を探れる方って何処かにいないかなぁ
英文記事でもいいのであれば是非ご紹介下さい

一方この頃、米国のあるクリエイター達が作った映像が
日本を含めて世界でちょっとした話題になります。
最初は少女が独特な武器を振り回すバトルアクションとして、
それからは少女同士の密な絆を描いた物語として、特に米国で大人気となる作品、
・RWBY(13)
です。 この頃には海外でも百合のときめきが理解されており、
日本に輸入される頃には既に莫大な数の組み合わせが生み出されていました。
多分、海外発の百合ジャンルとしては最初のものだと思われます1
日本でどれだけの人気になるかはまだ未知数ですが。

一方その少し後に、あのディズニーが男女の愛だけでなく、
姉妹の情愛に真実の愛がある、という物語を書き上げ
世界がひっくり返ることになります。これが
・アナと雪の女王(14)
RWBYは製作者が日本のアニメや漫画からの影響を公言していますが、
アナ雪はアメリカ独自の文脈で生まれた模様です。
そこは日本が15年前に通過した場所! なんて言えもしますが、
何分ディズニーなのでその影響力は世界的に絶大なものとなりました。
一方ディズニーなので薄い本は作りにくかったのですが、
イラストなどは多く投稿されています。

ちなみに百合妄想は日本人に限った話ではないらしく、
それどころか二次元と三次元の区別が付かない方々は
同性愛を助長するから上映するな、とか言い出したりもしているようです。
近親憎悪って怖いですね。

最後に それから今に至って

…17年末までは今までの文脈で理解できる作品が当たってたんですが
直後にポプテピピックとVtuberが来てしまって

15年、人気が出始めるのは少し後ですが、
月姫やFateシリーズで百合人気にも貢献してきたtype-moonが
・Fate Grandorder
を開始します。それまで百合妄想を喚起した作品は
進撃の巨人を除けば登場人物の殆どが女性だったのですが、
この作品の男女比は然程極端ではありません。
現状、進撃の巨人同様にBLやヘテロを愛好していた女性を百合に引きずり込み、
現在もっとも勢いのある百合ジャンルとなっています。
ただ、確実に来るであろうガチャ規制によるブレーキがどう転ぶか。

…とか言ってたら、pixivではジャンル全体の人気は17→18でほぼ一緒なのに
百合二次創作は1/2になるという事態が発生してしまいました。
(ちなみに薔薇はほぼトントンです)
百合が熱くなるような公式供給がそんなになかったからなぁ…

更に大人気作を後継する
・ラブライブ!サンシャイン!!(16)や、
誰もが予想しない大ヒットとなった
・けものフレンズ(17)といった供給も入ったのですが。
今もなお、作品自体が大当たりし、
そこから百合妄想が発生するという流れは変わっていません。 
ゆるゆり、ポプテピピックのような作品も当たりつつはありますが、
最初から百合需要を主眼に据えて、
かつ巨大ジャンルになったという作品はまだ出てきていないと言える状態です。

これは薔薇同様、百合需要は現実の同性愛同様にどうしても少数派になる、
という事でもあります。今は無視はできない位の存在感は付きましたし、
これから薔薇並みの巨大な需要が発生するかもしれませんが。

…しかし最近、物語に男性が登場するのが苦痛という過激派の男性も現れ始めたとか。
かつて過激派の女性が辿った道を半世紀遅れで辿る男性が現れている。
ただそこには傍観者に徹したいのと、
自分も可愛い女の子になりたいという二つの流れがあるようです。
事ここに至って、百合による衝撃で男性の性、
及びその自認が揺らぎつつあるのかもしれません。
女性のそれはもっと昔に揺らいでいたのですけどね。

もしかすると以後、もっと巨大な何かが来るのかもしれません。
絶対的な筆力や画力、あるいは構成力で、人のあり方を揺さぶりうる程の。
今はまだ百合需要は少数派です。
しかし真正面から百合を狙い、
世界を作り変えるような作品が現れる可能性も絶無ではないでしょう。

その道が厳しいのは私にも分かります。
しかし、これから何が起きるかは私にはまだ分かりません。

…と、まとめていたら。
・ポプテピピック(原作14。アニメ17-18)
が襲来。とびっきりのクソアニメとして話題になったのですが、
実は原作からして百合へと繋がる何かが色々と組み込まれていて、
更にアニメでも強烈なフックが足され、まんまと多くの百合好き(特に女性)を直撃2
原作は続行中、アニメ二期もあるでしょう。
狙って当てた作品の二つ目になるかも。

続けて17年末から人気が沸騰してきた
・Vtuber
特ににじさんじ(18)がジャンルとなりつつあります。
まだちょっと大ジャンルとまではいかないですし、
おそらく何処かで卒業を描かないといけないので時間制限もあるのですが、
全く新しい形としての供給は果たして何処まで飛べるでしょうか。

さらにまどか☆マギカの外伝となる
・マギアレコード(17)
が18年8月末にアニメ化発表。
割とディープな百合好きの支持を集めている作品です。
どれ位原作の要素を組み込むかはまだ不透明ですが、
もしかすると百合狙いかつ大ヒットになる最初の一撃になる、かもしれません。

そしてもう一つ
・私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い(11、アニメ13)
が途中から方向転換、
癖のある女友達と一緒にいようとする中で主人公が成長していく話となり、
18年現在、強烈に百合妄想を引き出す作品となってきました。
おそらく現在の路線でアニメ二期が来ます。こちらも大爆発するかも。

と、色々と将来への伏線が張られてきました。
この後どうなるかなー、何かあったら書き足したいものです。

おまけ 女性に百合が当たった理由を、分からないなりに考えてみる

第一節 輝きは誰もが持っていた、気付いてなかっただけで
 
誰だって好きな事をしたい
そして出来れば、相棒がほしい

身も蓋もない話を一つすれば、プリキュア、けいおんの辺りで
萌えアニメの服装等がダサくなくなったので女性にも人気が出た、
という事実は多分あります。
けいおんをアニメ化した京都アニメーションもその辺りを明言しています。

勿論、それは決定的な要因ではないでしょう。
先に結論から述べてしまえば、アニメや漫画、ゲーム等において描かれる
女性の「格好良さ」が多様化、具体化して、
より多くの人々に響くようになったんじゃないか、という文脈を建てていきます。

さてここでは「格好良い」女性を、
要は自らの道を行き、世界を作り変える女性として定義します。

そんな女性達は昔から今に至るまで人気を集めてきました。
もっとざっくり書けば自由で強い、という事ですが、
この二つの単語を使うと多分に別の意味が入るので、
敢えて「格好良い」という言葉を当てはめてみました。 

ただ、かつては
・女傑(トルメキアの殿下とか)
・男装の麗人(天王星の人とか)
・高嶺の花(赤薔薇さまとか)
と、際立って有能で頼れたり、超然とした憧れの存在だったり、
あるいは単純に力が強かったりと、
人気を集めていた「格好良い」女性は
特徴的で普通ではない人が多かったように思えます。 

しかしある作品において、
(一応宇宙を捻じ曲げる力を無意識に備えているのだけど)
使命とか役割とかとも一切関係なく、自分がやりたい事を全力でやるだけの、
普通の女の子が、世間の、勿論女の子達も含めた人気を急激に集めます。
・涼宮ハルヒの憂鬱(アニメ06)
です。 プリキュアや東方においても主人公の女の子達は割と普通だったのですが、
それなり以上に強いし何らかの使命を背負う存在でした。
そこから強さとか使命を省いた限りなく等身大の女の子も
「格好良い」女性として描けるし、それで大ヒットを狙える事がここで証明された、
と私は見ています。

…語り部となる少年を少女に置き換えたらという二次創作が、
当時爆発的な勢いで流行っています。
では、最初から全て少女同士の話として描かれていたとしたら?

この物語が大当たりするにおいて、二人が男女である必要があったのか、
正直私には判断しかねます。
一つ書けるのは、この物語で女性の支持を集めたのは
語り部の少年と超能力者の少年(?)のBLだけではなかった、という事。

主人公の(例の力を除けば)少々人付き合いが苦手な普通の少女と、
語り部の少年の何とも言えないもどかしい繋がりにも、
根強い女性の人気があります。

この二人の場合、少年少女の最終的な関係が何処に落ち着くのか、
腐れ縁、親友以上、それとも…。
その辺がとても微妙で絶妙なのが女性の支持を集めた理由なので、
少女同士だとどうなったか。
大当たりしなかったかもしれないし、
もしかするとセーラームーンS以上の大爆発が起きたのかもしれません。

…ともあれ、その3年後。
本当に普通の女の子が、やはり普通の女の子達と、異性を挟まず、
自分のペースで、やりたい事をやるアニメが大当たりします。それが
・けいおん!(アニメ09)です。
特殊な空間ではなく普通の学校で、世界に関わる使命や資質とかとも全く無縁で、
「めざせ武道館!!」とは言うものの、それ以上に皆で遊びたい。
他にも友人はいるけど、やはり五人がいい。
そして一番大切なのは、
誰の為でもなく自分達のやりたいように三年間を駆け抜けた事。
言明しているのを見た事がないので
(誰かやってたらごめんなさい)はっきり書くと、

放課後ティータイムの五人は「格好良い」のです。
特に女の子達にとっては、すごく。

誰にも阿らず、自分のやりたいようにやる。
だらけるにしても全力でやるにしても。 
「格好良さ」は、結局そこに尽きるのではないでしょうか。

以後ここを踏まえる事で、ありとあらゆる「格好良さ」を描けるようになりました。
これを私は女性の「格好良さ」の多様化、具体化と定義しています。
更には百合、というか女性二人(ないしそれ以上)だと、
「格好良さ」を様々な角度から描けます。 

二人の「格好良い」女性
「格好良い」女性に惹かれる女性
「格好良く」なろうとして背伸びしたり
二人で「格好良さ」を見つけたり
あるいは「格好良さ」を折ろうと企てたり…

加えてこの軸さえ抑えておけば無数の味付けができます。
見た目、性格、立ち位置、目標、願い、コンプレックス等々…
この辺りは何を試してみても当たりうるでしょう。
しかもキャラ同士で組み合わせ出来る。

実際、デレマス(11)(アニメ15)では
30kgのニート少女×186cm超の長身少女とか、
少々不器用な26歳のお姉さん×呑兵衛の25歳児など、
特徴的な組み合わせも人気だったりします。

また、この少し後に火が付く二次元アイドルブームも
おそらくこの「格好良さ」と無縁ではない、
というか自分の意志でアイドルを目指し、世界を変えていく姿は、
まさに自由で強くて「格好良い」女性そのものです。

ラブライブ!は自分たちのやり方で廃校という運命を変えていく話で、
サンシャイン!は変えられなかった運命の中で輝きを見つける話でした。

ポプテピピックも根本はここで、
要は女子中学生が二人で世界に中指を突き立てる話です。
自分たちが生きる為に。

逆に「格好良く」はなくても、そうなれればと願う人物が支持を集めたりも。
Fate/Grand orderのラヴィニア・ウェイトリーという少女は、
現状から抜け出そうとする望みはあるものの、それを実行できない、
有り体に言ってしまえば卑屈で根暗な性格で、
状況を変える事が出来たのは最後の最後だったのですが、
それ以前から女性の支持も確実に集めていました。
それまでは彼女自身も、親友の少女も 「格好良く」はなかったのにも関わらず。

…本人は自身の姿を醜いと思っていて(実際はそんな事無いよ!)
世間には鼻つまみ者扱いされてる極度に内気な少女が、
登場した時点で妙な支持を男女から集めていたんですよね。
供給が途絶えてしまっている今ではちょっと影が薄くなってますが…
うーん。実に興味深い。

と、こんな風に。
かつて特筆すべき個性や資質と不可分だった「格好良さ」は、
一旦ごく普通の日常を過ごす普通の女の子達に還元され、
それから様々な方向に広がっていきました。
そして「格好良さ」を軸とする女性にとっての百合も、
平行して多様化、具体化している…というのが私の理解です。

第二節 姫と女騎士

あるいは人付き合いが苦手な女性と
そんな彼女を引っ張っていく女性

とはいえ古来のお約束である、
囚われの女性を助ける騎士という物語3もまた
今日において強い人気を見せています。

ただ誤解してはいけないのは、この囚われの女性は
助けられるだけで何もしないという訳では決して無く、
騎士と共に困難にぶつかり、立ち向かって、
最終的には「格好良く」世界を変えるのが今日の流行りであるという事です4
で、これまでは男性が入る事が多かった騎士の位置に、
女性が入る物語が大ヒットしたのが2010年代でした。

進撃の巨人がまさにこの典型で、
ある事情で心を閉ざした少女と彼女に心臓を捧げた女性の絆が、
少女を支えて宿命に立ち向かう力となり、世界を作り変えた…という物語は、
(多分に男性キャラを目当てに読み始めた方々も含めて5
女性ファンの強烈な支持を集めました。

魔法少女まどか☆マギカも複雑なひねりを入れつつも
この王道をなぞって女性に大当たりしています6
悪意に翻弄されて壊れていく少女を救う為に、
過酷な過去を背負った少女が単身で運命に立ち向かったり。
かつて自身を救った少女の為に、
人格が擦り切れるまで戦い抜いた少女であるとか。
彼女たちも多くの女性ファンを引き寄せています。

しかしまどマギが複雑なのは
どっちが囚われの女性で騎士なのかが激しく入れ替わる事。
そしてそれ故に、視聴者の女性の視点が何処にあるのか、
囚われの女性か、騎士か、第三者なのかも何とも言えなかったりします。
それぞれにファンが居るのは確かなのですが、
一番多いのが何処なのかまでは私には分かりません。

艦これにも実はこの類型があったり。
最初に注目を集めたのは世界水準を軽く越えてる軽巡姉妹だったのですが7
火を付けたのは一航戦の二人でした。
加賀さんは男女から割と人付き合いが苦手な人として扱われていた一方、
赤城さんの扱いは男女でかなり変わっており、
男性はどちらかというとネタキャラ扱いしていましたが、
女性は状況に動じない頼れる女性として受け取っていたように思えます。

何が言いたいかというと、
他人と壁を作りがちな(囚われの女性)加賀さんを
無二の盟友で天衣無縫な(騎士)赤城さんが引っ張って、
ミッドウェーの悪夢を乗り越えるという筋書きが、
特に女性において見出され、また人気を集めていたのではないかと8

…そういえばユミクリ、杏さや、赤賀だったなぁと。
百合の場合は左右にあんまり意味はないのですが、
成り立ちを考えるとこの並びになるのもちょっと分かります。

第三節 BL経由の百合

少年漫画からBLに入る方々は無数にいるけれど
登場人物を全員女性にしたらそのままGLに入ってきたでござるの巻

一方で供給側からの話をすると、
主人公を含めて重要人物のほとんどが女性で男性の影が限りなく薄い、
そんな男性向け作品も00年前後から増えてきたのですが。

これらの作品はあくまで男性を狙っていたわけで、
展開は男性向けする少年漫画のノリで、
少女達の中身も少年っぽくなる傾向がありました。
東方シリーズが最初に男性に当たったのはこれも原因…かも?
ちょっと東方に関しては中身が少年だったかどうかが何とも言えませんが。

で、これらの作品から百合に入った男性が
00年代の百合人気を盛り上げたのでは、という考察を第四章で書いたのですが。

少年っぽい少女達が
少年漫画みたいな展開をする作品には
登場人物の性別を気にしなければBLに通じるときめきがあるのでは…?
というひらめきが、10年代頃には女性の間にも認識され始めます。

艦隊これくしょんとか無印ラブライブ(サンシャインも?)とかが
女性にも大当たりしたのはおそらくこの文脈とも無関係ではないです。
そしてこの、少年っぽい少女達が少年漫画っぽい展開をする作品の典型として
女性にもスマッシュヒットしたのがガールズアンドパンツァー劇場版。
TVアニメの時点では男性の支持が多かったのですが、
劇場版の出来が素晴らしかった事もあって一気に女性人気が沸騰。
pixivでも女性によるものと思われるガルパン二次創作が急増し、
その中には百合作品も無数に含まれていました。

消しゴムと鉛筆があればBLが成立するというジョークが00年代には生まれていますが、
関係性が重要ならキャラは女性でもいいんじゃないのか、
という事に気が付くのにはそこから10年かかった形になります。
性別の壁は有機物と無機物の壁より遥かに高かったという、
なんというか不思議な現象が確認されたのが10年代。
これは女性に限った話じゃないんですけどね、実の所。

ともあれ。
まどマギ、進撃、ラブライブ、ガルパン劇場版などの作品をきっかけに
10年代、特に2013年以降は女性の百合ファンが急増しています。
ただ、この新しく入ってきた女性ファンはそれまでの女性ファンとは
微妙に毛色が違いもするようで。
10年代に入って百合二次創作はBL二次創作っぽくなった…という声もあり、
私もちょっとそれに同意しています9
しかしそれは数が増えた、という話であって
それ以前からあった百合二次創作の流れが消えた訳でもないのですが。

第四節 では二次創作でどう描かれるのか

専門用語を使って身も蓋もない結論を先に書くと
バリタチ同士の百合二次創作ってそんなにないよね

…で、ここまでが百合妄想の起点となる原作の話です。
二次創作の作者が女性の場合、
登場人物はかなり慎重に距離を測っていく事が多く、
またその綱引きが見所ともなります。

面白いのは、原作ではあけすけであっても、
不思議と百合二次創作においては戸惑いや脆さが強調される事が時々あるという点。
女性を惹き付ける原作の「格好良さ」は、
二次創作において不安や渇望、
相手の存在によって初めて埋まる(もしくは誤魔化しうる)欠落に裏打ちされ、
真に完全なものになる、という事なのでしょうか?

これは奥ゆかしさとは違う気はします。
しかしずっとこの傾向が続くのか否か。
10年も経ってしまえば原作に何を求めるか、
そして二次創作がどのように展開されるかは、 
まるで変わっているのではないか、という気もします。
そして未来がどの方向に進んでいくかは私にはさっぱり分からないので、
一旦ここで考察を打ち切る事とします。

おわりに

何分百合の歴史に関しては先行研究が存在しなかったので、
こんな風に独断と偏見で自分なりにまとめる事しかできなかったのが
辛い所ではあります。
しかし「何いってんだ此奴」というあなたの感情もまた、
そこから自身の意見をまとめる、
更には妥当性のある論考を生み出すきっかけとなるのも事実なので、
こうして蛮勇を奮ってみた次第です。

…すいません嘘つきました!
この薄い本に至るもやっとした考えをまとめて、
実際に形にするのが最高に楽しかったからやったんです!
とはいえこの薄い本が読者の方々に何かを引き起こすとしたら
とても嬉しいのもまた事実。

機会があったら皆様と色々語ってみたいです。
いつか、また、何処かで!

あ、個別作品紹介もしてます。