2018年9月10日月曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その2

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・魔法少女まどか☆マギカ(11)
脚本の名前で皆嫌な予感はしていましたが、
実際キャラデザで釣られた視聴者を地獄に叩き落とした、
残酷な運命に5人の少女(劇場版で+1)が立ち向かう物語。
切実な願いを悪意に踏みにじられながら、
あがき続ける少女達。
そして主人公が最後に出した答えは…

強引な掴みが最初に話題になりましたが、
物語の全貌が少しづつ見え始め、
オープニングが誰の言葉なのかわかった時の感覚は、
おそらく実際に視聴しないと分からないかと。

…それまで主人公は 「お前何の為に存在してるん」と思われてたりしていました。
最終話までには皆がごめんなさいしたけれど。

百合ジャンルの中でも
これほどむき出しの生死が牙を剥いてくる作品は珍しく、
それ故に少女同士の絆も印象的。
なお作中でカタストロフが起きる前に現実世界で大災害が起きてしまい
最終回の放映がしばし自粛されたりも。

このアニメの外伝にあたるスマホゲーム
『マギアレコード』も2019年のアニメ化が決定。
こちらは(百合ファンも含めて)比較的狭く深くで突き刺さっていたのですが、
さて、アニメ化でどうなるやら。

・ガールズ&パンツァー(13)(劇場版15)
廃校の危機を迎えた学校が
ある競技の強豪から転校してきた主人公を中心とし、
学校存続の為に全国大会制覇を目指す物語。

ただしその競技は実弾の飛び交う戦車軍団同士の戦闘。

これだけ見ると何が何だか分からないでしょうが、
濃いミリタリーネタを挟みつつも、
最初は自身の境遇に戸惑っていた主人公が多くの仲間達に支えられ、
自らの意志で競技に戻っていく実に王道な物語です。

大怪我とかは無いよ?
いや、本当に無いですって。

こちらも最終回放映までにすったもんだがありましたが無事完結。
更に劇場版も上映され、これが素晴らしい出来で大ブレイク。
特に女性ファンは劇場版から入った者も多い模様です。

…あるキャラが劇場版以降、急に注目され始め、
二次創作で色々と変な属性を付けられたり。
舞台となった大洗町に多数のファンが詰めかけ、
彼の地の魅力が再評価され、経済が大いに潤ったりと、
場外で色々な現象が起きた作品でもあります。

元々大洗町が観光地として魅力的だった事もあって、
アニメによる「聖地巡礼」が注目されるきっかけともなりました。

2018年現在、完結編が制作されている模様。
どうなるかな。

・THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS(11)(アニメ15)
通称デレマス。二次元アイドルブームの火付け役、
アイドルマスターシリーズを下敷きにしたスマホゲーム。
一つの世界観に無数の女性キャラを登場させて大当たりした、
おそらく二つ目のジャンルです。
(一つ目は東方で三つ目は艦これ)

プレイヤー=主人公のプロデューサーはほぼ男性と思われていますが、
百合ファンはそんなもの知った事かと言わんばかりに
アイドルであるキャラ同士の組み合わせを無数に見つけていきました。

元祖の人気もあって元々隠然たる勢力がありましたが、
火がついたのはアニメ以降。
(ハーフの彼女が普通に日本語喋った事があったのは黒歴史になったとか)
プレイヤーが想像もしていなかった組み合わせも数多く提示され、
2018年現在でも熱い人気を見せています。

私的にアイドル達に関われなくもないが、
まずそんな事しなさそうなアニメの男性Pの味付けも絶妙でした。
おかげで百合も×男性Pも捗ったのだそうで。

…一方、現在深刻な社会問題になりつつある
ゲームへの想像を絶する課金が発生し始めたのもこの作品。
あったなぁ、課金兵なんて言葉。
言葉は見なくなっても現象が更に過激化するなんて…

そして、2~30代の女性に声をかけ、
アイドルとして大成させる事が可能なゲームだったりもします。
おそらく多数のキャラを出すにあたって、ありとあらゆる特性を試す中で 
(プレイヤーにとって)年上のおねーさんへの需要を狙ったのでしょうが、
これも思わぬ方向に当たっています。

百合ジャンルの歴史においては、
百合の鉱脈は少女同士だけではなく、
大人の女性同士、あるいは大人と少女の間にも存在する事を
おそらく最初に示したジャンルでもあります。
(もちろんこれ以前にもそういう作品は多数あったでしょう)
ファーストインパクトこそ艦これに持っていかれましたが、
アニメ化をきっかけにその意義が大いに注目され、
今日も非常に活発なジャンルになっているのは先述の通り。
20代後半が明言されてるキャラ同士の組み合わせがジャンルになったのは
デレマスが最初の筈。

後続作品のシャイニーカラーズは、
2018年現在、まだコンテンツそのものが大当たりはしていない模様。
やはりアニメ化待ちになるのでしょうか。
…ただ、最年長が現状23歳(しかも一人。20代ですら二人だけ)なのは、
そのずっと上の女性を当ててるコンテンツの後継作として
ちょっと痛手になる予感も。

・ラブライブ!(10)(アニメ、ゲーム13)
元々は2010年の雑誌企画で、CD、漫画(11)ライブ(11)の成功を経て、
アニメ(13)で一気に爆発。
学校生活の中でアマチュアとしてアイドル活動を行う
「スクールアイドル」の概念をぶち上げたシリーズです。

初めは学校存続の為に始めたスクールアイドル活動を通じ、
少女達が集い、時にすれ違いつつも、
最終的に九人全員が主人公として結束していく物語で、
社会現象になるくらい多くの「ラブライバー」を生み出しました。

製作者の予想を遥かに超えてヒットした作品でもあり、
その中には大量の女性ファン、更に百合ファンも含まれています。
(間違いなくこんなに女性に当たるとは思ってなかった筈)
男性と女性で人気の組み合わせが大きく異なる事、
百合二次創作している人数はおそらく女性の方が多いのも前述の通り。
この作品はネタバレの意味が殆ど無いので名前を出すと、
にこまきとのぞえりは女性人気が半端なく強いですし、
二次創作してる方の多くも女性です。
この組み合わせが人気な理由が分かると、
女性に当たる百合の何たるかも分かるかもしれません。
ちなみに私はまだ学んでいる段階です。

特に女性にとっては東方に続く第二の巨大百合ジャンルです。
男性はμ's、ないしAquorsをアイドルとして追いかけもしますが、
女性は比較的中に入りやすい(無論、外から見ている人もいる)分、
そこで描写されるときめきは女性により強く響くのかも。

…男性目線からすると、
明白な主人公がいるわけではないので、
一体化の方向で行くとちょっと難しいんですよね。
出来ない訳ではないんですが。

ちなみに無印の組み合わせ一番人気は三年生と一年生、
具体的には先述のにこまきなのですが、
そこには先輩後輩の文脈は殆ど無いです。
これはマリみてにおける超然とした存在への「憧れ」を起点とし、
様々な感情へ分化した百合において実は非常に特異かつ画期的だったりも。

いや「憧れ」が絡んでないわけではないのですが、
マリみてにおける高嶺の花への憧れではなくて、
もっとこう、何というか…
年が離れた級友なので距離そのものはずっと近いんですが、
決定的に自分とは違うものをお互いに持っていると言えばいいのか。

要は15年経って、百合へのときめきが
すごくすごく多様化したという話でございます。

・アイカツ!(12)
就学前の女の子をターゲットにし、
プリキュアのシリーズ化に成功したバンダイなどが
その少し上の年代を狙った企画。
トップスターを狙う少女達がその養成校に入って
妙な事もしつつ明るく楽しく頑張っていく物語です。

やはり少女同士の絆がアニメなどでガッツリ描写され、
メインターゲットである小学生女子のみならず、
中学、高校…どころか青年層の女性にも大ヒット。

そしてプリキュア同様、
このアイカツやプリパラが撒いた種は、
他の百合ジャンルへと入っていくきっかけともなっています。

というか、子供にとっては
ラブライブがアイカツの続編に見えるってのは、
言われてみれば分かるけど、意外でした…

・けものフレンズ(15)(アニメ17)
ヒトっぽくなった動物「フレンズ」達の集う、
でっかい動物園ジャパリパークで
よく分からない怪物「セルリアン」に脅かされつつ
フレンズ達と共にドッタンバッタン大騒ぎする、
一見すれば呑気で優しい世界での物語。

元はゲームが中心の企画でした。
アニメ化に際して色々世界観が書き足されています。

このジャパリパークを舞台に、
一切の記憶がない主人公があるフレンズと二人でパークを巡り、
総じてお人好しでちょっと抜けてる様々なフレンズに出会い、
彼らの問題を解決しつつ、自分が何者かを見つけて…

そこまで考えなくても 「すっごーい!」「たーのしー!」アニメです。

1話で主人公同様、視聴者も何が何だかな状況に放り込まれますが
2話でおや、となり
3話ではすっかり引きずり込まれてしまう
極めて優れた脚本と構成に、
一歩間違えるとチープになりかねない絵面が上手く嵌った
色々な意味で奇跡みたいな作品です。
見るなら必ず最後までどうぞ。
物語ってのはやっぱ脚本と構成なのねってのが本当によく分かります。

で、この「フレンズ」 一人の例外もなく女の子。
別名アニマルガールですし。
更に「けものはいても、のけものはいない」という事か、
大体の「フレンズ」には友達や、
構ってくれる別種の「フレンズ」がいるので、
あなたはレズね!(アミメキリン並の推理) という視聴者も続出しました。

間違いなく2017年アニメの最高傑作で、
日本各地の動物園で入場者が激増したりと、
ちょっとした社会現象…
どころか、ある1頭のペンギンが世界中に愛されるなんて事態さえ起きました。
まさか本当にサンドスターが降ってくるなんて誰が想像できたでしょう。

なのに、あんな事になるなんて…
どうして…

・ポプテピピック(14、アニメ17末)
クソマンガ、かつクソアニメ。
で終わらせてしまうのも何なので。

理不尽と暴力とパロディをミキサーにかけて、
女子中学二年生二人を生み出した4コマ漫画です。
原作の時点でなんとなく世に知られ、しかし狭く深く突き刺さっていましたが、
キングレコードが金を注ぎ込み、
神風動画やAC部などが全力の方向音痴に突っ走ったアニメで、
2018年明けの話題を完全にかっさらいました。
アニメが終わってすぐにファンの多くは見えなくなったのですが。

元々は15分アニメ
→30分に
→じゃあ声優を変えて同じアニメを二回放映しよう
→せっかくだから前半女性声優、男性声優で行こう
→じゃあ大御所も呼ぼうぜ
→そこまでやるんだったらアニメも前後で変えてみよう
→オッケーだったら設定の根幹に組み込んでやる

という流れが本当にあったのかは分かりませんが、
ともかく結果的に凄まじい実験作になりました。
女子中学生二人に郷田ほづみと銀河万丈をキャスティングなんて発想は
一見すると狂気の沙汰ですが、意外と計算づくでもあった模様。

一方で百合ジャンルとして原作とアニメを見つめると
根本的には女子中学生二人が世界に中指を突き立てる話で、
原作者も間違いなく分かっていて百合に通じるときめきを組み込んでいます。

ポプ子はピピ美がいない世界では生きていけない
ピピ美はポプ子がいない世界を生かしておく理由がない
という、一心同体のようでいて絶妙にズレのある二人の間に、
原作の時点で百合を見出していた方々は狂人扱いされていたのですが、
実は彼らは全面的に正しかったという。

…そしてアニメ化の結果、
最終回でこのズレに別の意味が入ってしまって
暗闇の更に奥に引きずり込まれた方々もいました。

ポプ子じゃなくてピピ美だったのは
間違いなく狙いがあった筈です。

その3はこちら。すべてVtuberの話

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