2018年9月23日日曜日

百合ジャンルの歴史 個別作品紹介その3 あるいはかえみと論考

本編はこちら
個別紹介その1はこちら

・Vtuber(17末、にじさんじ18)
というより実質にじさんじ、もっと言えばかえみと。
現状pixivで圧倒的に強いのはこの二人です。
おそらくtwitterでも。

そもそもVtuber、バーチャルユーチューバーとは何ぞや。
現在進行系の現象なので色々と論じ方はあると思いますが、
結論から言えば2Dあるいは3Dのアバターを着てる配信者です。

ただ彼らの多くがYoutubeを活動拠点としているので、
Youtuberの一種とみなされる事が多いのですが、
実はそれ以外の場、例えばtwitterとかでも活動しているので
「配信者」と定義してみました。

実際の所、元々有名人だったり、イラストレーターだったり、
ミュージシャンだったりといった背景を持つ事なく、
発言が面白かったり、考察が鋭かったり、行動が奇矯だったりと、
twitter上の活動だけで有名になったアカウントが結構いるのですが、
(アルファツイッタラーなんて言い回しもあります)
そんなSNSだけで有名になれるような元々面白い人々が、
アバターを獲得して大ブレイクしたのがVtuberだと私は認識しています。
少なくともヒットしているVtuberに関しては。

で、ここからが本題。
SNSにおけるアカウント同士の間柄に百合が見出されたのは、
実はVtuberが最初ではなかったりします。

艦隊これくしょんのなりきりアカウント同士(二人とも女性キャラ)で、
思いを打ち明け、受け入れられたという出来事がありました。
結構少なくない人々の記憶に残っている彼女達は、
その後アカウントを消してしまい、アーカイブも残さなかったので、
アルペジオのように電子の海に去っていってしまったのですが。

もう彼女達の名前を使っても検索すらできなくなった二人の間柄には、
確かに百合へと繋がるものがあった筈です。
そこには原作への愛があって、
現在進行系で進展していた間柄があり、
その進展を共有していた人々がいました。

それから数年経って。
最初に月ノ美兎がその強烈な中身でブレイク。
その後彼女が築いた橋頭堡から、
Vtuberグループ「にじさんじ」が世に出てきます。
で、月ノ美兎自身もその一員として動画配信でコラボもしているのですが。

始まりがいつだったのかは分かりません。
元々仲が良かったのか、配信中に気が合ったのかも。
しかしいつの間にか月ノ美兎と樋口楓は一番の仲良しさんになり、
この二人で何かする時が最も盛り上がるようになりました。

Vtuberというガワがあるのでわかりにくくはあるのですが、
面白い人達が一人、二人、ないし多人数で愉快な事をして
(バカな事、と言ってもいいかもしれません。勿論褒め言葉)
彼ら自身も視聴者も一緒に楽しんでいるのが流行りの本質です。

で、バーチャルに限った話でもなく。
二人でいっぱい楽しい事をすれば仲良しにもなるよね。

そんな訳で、まあ何というか色々と愉快なコトをしつつ
少女(とあえて書きます)二人がリアルタイムで接近していくのを、
視聴者は現在進行系で共有する事になりました。
というか今この瞬間にしてます。

SNS上で…というのはそんなに重要ではないのですが、
二人の間柄が進展していくのを共有する経験は、
おそらく多くの視聴者にとって非常に新鮮なものでした。

バーチャルキャラ同士なのに
間柄の進展はリアルよりもリアルという
何とも奇々怪々な現象がそこにはあります。

更に、かえみとのような類型が
百合ジャンルにおいて大当たりした組み合わせには無かったのも
百合ファンにとっての新しさがあったのだと思います。

ざっくりと切り分けてしまうと、かえみとって、
ワトソンとホームズの間柄に似てるんですが。
こういう類型の組み合わせって、
そういえば大きいジャンルには無かったように思えます。
ちなみにハドソン夫人が静凛で、
モリアーティ教授は…誰だろう?

親友…ともちょっと違う、
不均衡のあるバディというか、戦友というか。
(何でもサイドキックという呼び名があるんだそうです)
ワトソンだけでは大人気シリーズにはならなかったのでしょうが、
しかしホームズはワトソンがいないと始まらない、
かえみともそんな間柄に思えます。

で、再び論を引き戻して。
Vtuberの本質はガワを被った元々面白い人々と書きました。
しかし彼らは、活動を止めてしまうと急速に忘れ去られてしまう
どうにも避けがたい宿命を背負った存在でもあります。
良くも悪くも刹那において最も輝けるのが人気アカウントであり、
Vtuberもその延長線にあります。

ずっとずっと二人では走れない。
どこかで必ず終わりが来ます。

仮ににじさんじが活動停止後にアーカイブを残しても、
(多分残さないと思います)
我々に出来るのは追体験だけで、
二人が接近していく刹那は共有できない。

SNS上での間柄の進展、そこにあるときめきは、
現在進行系である事が生命線です。
過去形になってしまうと後世への伝達が極めて困難になるでしょう。
実際に検索すらできなくなったケースを私は紹介しました。

イラストとか小説とか薄い本とかの二次創作は残る筈。
しかしそこから当時の熱をどれだけサルベージできるのか。

ときめきは今そこにあります。
しかし後に残せるのか。
そもそも無くなってしまった刹那を残す必要があるのか。

後になって残るのは、
写真…もとい二次創作だけ、という事になるかもしれません。
ジャンルの栄枯盛衰はどこにも例外なくあるのですが、
Vtuberはそれが極端に激しくなる予感が、実の所すごくします。

例えば10年後、今の事情を知らない人々に、
どう説明すればいいんだろうなぁ。

もし、後に伝えたいのならば。
今から何か方法を考える必要はあるでしょう。
とても大変でしょうけれど…

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